〈 目次 〉 |
※ 3ピースに割れたお茶碗の金継ぎ修理のやり方を説明していきます。本物の漆を使った修理方法ですので「かぶれる」可能性があります。ご注意ください。
金継ぎとは
金継ぎとは欠けたり、割れたりした器を漆で直す日本の伝統技法です。漆で接着し、漆で欠けや穴を埋め、漆を塗って、最後に金粉や銀粉を蒔いてお化粧をします。
割れた器の診察 |
器 information
- 器の作家: 庄司理恵さん
- 器の特徴: 釉薬がマットでかなりガサガサしている
(錆漆の際はマスキングが必要です) - 破損状況: 本体と割れた破片が2つ
- 破損個所: 縁の部分
- 破損個所の大きさ: (約)幅6㎝ × 高さ3㎝
- 器の大きさ: (約)直径15㎝ × 高さ9㎝
- 金継ぎの仕上げ方: 銀仕上げ
今回の修理依頼の器は釉薬がかなりガサガサしています。
錆漆が入り込むときれいにとれない可能性がありそうですので
錆漆をするときはマスキングをします。
それから破損状況を詳しくチェックします。
- 「極小の欠け」がないか
- うっすらとしかみえないような「ひび」がないか
などをよく見てください。
器の雰囲気を見て、今回の金継ぎ修理は「シンプルで均一な太さのライン」
にするよりも「抑揚のある不均一なライン」の方が合いそうだと判断しました。
ので、そのつもりで修理を進めていきます。
割れた器の素地調整 |
素地調整で使う道具: ダイヤモンドのリュータ―ビット(▸ 使う道具の購入先・値段はこちらです)
ホームセンターなどで手に入るリュータ―のダイヤモンドビットを使います
▸ダイヤモンドビットのカスタマイズ
(画像を撮っていなかったので代理画像です)
本体の割れ部分のエッジと割れたパーツのエッジをダイヤモンドビットで軽く削ります。
全てのパーツの表、裏の両面をやってください。
割れた器の素地固め |
素地の固めで使う道具と材料
- 材料 : 漆(生漆)、テレピン、ティッシュ
- 道具 : 小筆(面相筆)、付け箆(▸ 付け箆の作り方)
- 掃除用、その他 : 定盤(作業台)、サラダ油、小箆、ウエス、テレピン
筆を使う前に筆の中にある油分を洗い出してください▸ 使用前の筆の洗い方
素地固めで使う漆は 生漆(10) : テレピン(3) くらいに薄めます
(画像を撮っていなかったので代理画像です)
割れた本体の断面とパーツの断面の両方を
漆を塗布してください。
(画像を撮っていなかったので代理画像です)
吸い込まなかった余分な漆はティッシュで吸い取ります。
この後、湿した(湿度60%くらいの)場所に置いて
漆が固まるのを待ちます。
6~12時間後くらいに次の作業に進みます。
(あまり長い時間放置しないようにしてください。
漆が硬くなりすぎて次の接着が弱くなってしまいますので)
作業が終わったら油で筆を洗います ▸ 使用後の筆の洗い方
割れた器を麦漆で接着する |
麦漆接着で使う道具と材料
- 道具: プラスチック箆、竹の付け箆(▸ 付け箆の作り方)
- 材料: 生漆、小麦粉、水
(▸ 麦漆接着で使う道具・材料の購入先・価格の説明はこちらです)
接着剤には麦漆(むぎうるし)を使いますのでまずは麦漆を作ってください。
▸ 麦漆の作り方
割れた器の断面に付け箆を使って麦漆を塗布していきます
(画像を撮っていなかったので代理画像です)
割れた器の本体とパーツの全ての断面に麦漆を付けていってください。
麦漆はなるべく薄くつけてください。掠れるようじゃダメです。
湿した場所に30~60分くらい置いて麦漆が乾き始めるのを待ちます。
麦漆表面のテカりが弱くなったら接着します。が、分かりにくいですよね。
よくわからなかったらすぐにくっつけちゃっても大丈夫です。
乾くのに時間がかかりますが。
麦漆の硬化は余裕を見て2週間くらい放置します。
次の工程を見る ▸ ② ~漆の下塗りまで(概要)
他の修理工程を見る ▸ ③ ~銀蒔絵完成まで