ファイツ!!
※ 口周りが割れてしまった湯飲み茶わんの金継ぎ(金繕い)修理のやり方を説明していきます。本物の漆を使った修理方法ですので「かぶれる」可能性があります。ご注意ください。
※ 万が一、漆が肌に付いた場合はすぐに「油(サラダ油など)」でよく洗って下さい。
油?? そうです。「油」をつけ、ゴシゴシ漆を洗い落としてください。その後、その油を石けんや中性洗剤で洗い流してください。
今回は金継ぎ工程の内の〈麦漆むぎうるし(接着剤)で破片を接着〉までのやり方を解説していきます。
【 前回の作業を見る 】 |
作業を始めるその前に…
金継ぎでは本漆を使うので「ディフェンシブ」に行きましょう。ゴム手袋は必須アイテムです◎
02 破片の接着
道具
②作業板 ▸作り方 ③練りベラ ▸作り方 ④付けベラ ▸作り方 ⑦マスキングテープ
材料
①水 ⑤生漆 ⑥小麦粉
▸ 道具・材料の値段/販売店
※ 麦漆むぎうるし(接着剤)の”正味期限”は2~3日くらいと考えてください。基本的に「使うときに作る」が原則です。保存があまり効かないので、「作り置き」は避けてください◎作った時が一番「乾き」がよく、時間が経つほど、どんどん乾きが悪くなってきます。
漆を使って接着剤を作ります。
▸ 麦漆むぎうるし(接着剤)の詳しい作り方
そう、漆と小麦粉で「接着剤」が出来ちゃいます。料理??
【 麦漆むぎうるし(接着剤)漆の作り方 】 【体積比/目分量】… 小麦粉 1:1 生漆 ※水は適量
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【 麦漆むぎうるし(接着剤)の作り方動画 】
初めのうちは失敗しないように、小さな計量スプーンを使うといいです。
(ベストは1/4サイズです。けど、滅多に売っているお店がありませんー)
※ 割れたピースが多い場合は…
麦漆むぎうるし(接着剤)を塗布する前にあらかじめどのパーツがどの部分に来るか確認しておきます。
【 破片が多い時の接着時の注意 】
↑これ、やっておかないと「カオス」になります(涙) 番号をふっておけば、万が一、「並び順」が崩れてしまった時もどこにくる破片か予想がつきやすくなります。 |
今回の「割れ修理」はピースが2つなので、わざわざ↑この作業をやらなくても大丈夫だと思います。
私…極度のパズル音痴なのです!という方は必ず番号をふっておいてください◎
麦漆の乾き具合をチェックするためにいらない紙やハガキなどに麦漆を薄く付けておきます。作業始めと、終わりに付けておくといいかと思います。
それでは実践です◎
麦漆むぎうるし(接着剤)を破損部の断面に付けていきます。
注意点としては「ヘラの先に麦漆をちょっとずつ取って、付けていく」です。
いやいや、「ちょっとずつ取って…」と言われても、どうやればいいのですか?
なるほど、そうですね◎ヘラを↓のように使って、麦漆をヘラの先で掬ってください。
【 麦漆の掬い方 】
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どうでしょうか?できそうですか??最初はできなくても、繰り返しやっているうちにスムーズにできるようになります。リズムよくできるようになると気持ちいいですよ。なぜか◎
【 接着の手順動画 】…見づらいですが
割れた箇所の断面、全てに麦漆むぎうるし(接着剤)を付けていきます。
注意点としては接着剤を「薄く延ばしていく」です。
ヘラの先に付けた少量の麦漆を器の断面に乗せ、それをヘラで薄く延ばしていきます。
なるべく全面に麦漆がつくように、ヘラを往復させます。
厚みなるべく均一になるように気を付けてください。
できました◎
本体の方ができたら、破片のそれぞれにも同様に麦漆むぎうるし(接着剤)を付けていきます。
麦漆を破損個所の断面に付ける…ということは、つまり接着した時のその隙間に「異物」を挟みこんでいる…ということになります。
↑ヘラを横にスライドさせながら、ヘラの先に付けた麦漆を置いていきます。これも最初はちょっとやりづらいと思いますが、できるようになると気持ちがいいのです◎
接着の隙間に挟まる「異物」の厚みが厚いほど、接着した時の「ズレ」が大きくなります。ですので、なるべく「薄く」を心掛けてください◎
ヘラの面を使って、麦漆を薄く、均一に延ばしていきます。ヘラは往復させて、全面に隙間なく麦漆が付くようにします。
麦漆付け作業終了◎
テレピン(又はエタノール、灯油など)を垂らして、 caution ! 厳密に言うと、きれいに拭き終わった作業板の上にも「ごくごく薄っすら」と漆の成分が残っています。ですので、完全に全ての作業が終わるまではしっかりとゴム手袋をして、ゴム手袋を外したあとは作業板を含めて漆の道具類を触らないようにした方がいいです。 |
待ちます。ひたすら待ちます。麦漆が乾き始めるのを待ちます。
麦漆の表面が乾いてきて、少しマットになってきます。1~2時間といったところでしょうか。(かなり時間の幅がありますね。これじゃ、参考にならないかな)
↑少-し、麦漆の表面の艶が引けて、ちょいマットになっています。
けど、この画像だけでは分かりませんよね?済みません。
ヘラでチョチョッとツッついてみて、ほんのちょっとぺたつくくらいがいいです。(本当のことを言うと、ほぼぺたつかないくらいがいいのですが、これだと失敗する可能性があるので、安全パイで行きましょう◎)
待っている時間がない!とか、性格上「待つ」のは無理です…という人は「乾き始めていない」状態で接着しても大丈夫です。(普通の金継ぎ教室ではすぐに接着していると思います)
なのですが、「乾き始め」のちょうどよいタイミングでくっつけると、
- 接着作業がやりやすい
(接着剤が半乾き状態で接着力が強くなっているので、作業をしている最中に接着した破片が「ポロッ」と落ちづらい)
- その後の麦漆の乾きも明らかに早い
のです◎
ですが、接着剤が乾いちゃいそうな気がしてちょっと不安なのね、という方は少し早めに接着作業を行ってください。(すぐに接着しちゃってもいいです◎)
麦漆で接着したら2~3週間、硬化待ちしてください。長いな~。
実は今回は 3時間くらい放っておきました。結構、待つ場合は、うっかり作業をし忘れないようにしてください。
これがですね、時間が空き過ぎるので「接着作業中だった」ことをいつの間にか忘れてしまうのです(涙)。ご注意ご注意◎
破片を一つずつ嵌めていきます。
ピースを嵌めたらグリグリ押し込んでいきます。「歯ぎしり」するように接着箇所を小刻みに動かします。
しっかり圧着させてください。
残ったピースを順番に嵌めていきます。
ピースを一つずつ嵌めていくわけですが、嵌めていくときに一片一片の「ズレ」に対して、あまり神経質になり過ぎないようにしてください。
なるべく正確に嵌めていきたいところですが、結局、次のピースを嵌めた時に他のピースがズレます(涙)。そりゃ、押し込んでいるわけですから、どうしたってズレますよね。
なので、あまり一つ一つに対して、厳密になり過ぎる必要はありません。
ひとまず全部のピースをしっかりと押し込んで、くっつけてしまいます。
ここからが「微調整」で頑張るところです。
押し込みつつ、ズレを修正していきます。あらゆる角度から接着箇所をチェックして、なるべくズレが生じないようにします。
でも…あちらのズレを直してたら、こちらがズレ…、それならばと、こちらのズレを調整していたら、いつの間にかあちらが再びズレている…
ということになります。そうなります。はい。ツライです。
なので「一か所をメチャクチャ正確にズレなく嵌める」よりかは「全体を見た時に、個々のズレをお互い融通しあって、”まあまあ”うまく収まっている」…という感じがいいと思います。「つまり全体がほんのちょっとずつズレている」…ということです。何か「共同体論」にも通じますね。(←と思うのは私だけ?)
もちろん、一か所にズレを集中させて、そこだけは大幅に「ズラす」ことで、敢えて「ズレたからこそ現れた”見せ場”」とするのも魅力的な在り方かと思います。
「ズレ」というのは「割れた」ときにこの世に生じた現象なわけです。でもいつの間にか、金継ぎ修理する人たちにとっては「ズレ」を拒絶する態度が普通になっています。壊れたラインは金で目立たせるのに、「ズレ」は見えちゃダメ!…これって何か、すごく排他的な態度ですね(笑)
やっぱり「受け容れる姿勢」の方がいいですよね。人としても◎
…と言いつつ、はい、「ズレ」がなるべく見えないように調整しました!排他的人間(笑)
湯呑は 口を付けて使うものなので、「口周り」にズレがなるべくなくなるようにしました。
口を付けた時に「ん?」って不快な違和感を感じないように。
でもこれもさっきの話ですが、口元がちょっとズレていることで、呑むときに「かすかな”引っ掛かり”を感じさせる」というのもありだと思います。
その引っ掛かりは”ちょっと不快”かもしれません。けど、そのことで意識は「ここ」「この瞬間」に引き寄せられる。使っている人が「ああ、これは壊れたものを直したのか…」って認識する。
その時、実は意識の深いところでは「そうだよな…、ズレててもいいんだよな。世間がダメだとか言っている部分があったっていいんだよな。
意外とこのズレが可愛いじゃん」って感じていたり、「ああ、人もモノも壊れていくんだな…。でも何かしらの遺志がこうやって引き継がれていくのかもな…」って感じているかもしれない。
この「ズレ論」ですが、多分、私の考えは世間一般の金継ぎ先生とはズレているので、ご注意ください。
もし金継ぎ教室で習っている方が、先生にこんな話をしたら、「この人はおバカなのね」白い目で見られるか、なかったこととして滑らかにスルーされると思いますので、取り扱い注意です◎
はい、終了です◎ ではまたお会いしましょうー。
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