【Book コーナー】 本屋で買える「金継ぎ本」のご紹介

 

金継ぎに興味をお持ちの方、チャレンジしてみようと思っている方。本をお探しでしょうか?
わかります、わかります。どれを選んでいいのか迷いますよね。(でも、本を買わなくても「金継ぎ図書館」がありますよ!ん?分かりにくい?あ…確かに。あの「鳩」が嫌い?…なるほど)

金継ぎ図書館がブックレヴューなるものをしてみたいと思います。参考にしてください。基本的に誉めます!(けなしちゃダメですよね)

 

現在の金継ぎ図書館おススメ図書

  • 初心者~…「金継ぎ一年生」/〈本漆+樹脂〉金継ぎ
  • 中級者~上級者…「ゼロからの金継ぎ入門」/〈本漆〉金継ぎ

 

 

 

「金継ぎのすすめ~ものを大切にする心」 


金継ぎの本。「金継ぎのすすめ」

category: 金継ぎライフスタイル

編集・小澤典代/誠文堂新光社/2013年発行/値段¥1,600+税

対象者: 金継ぎ「前」の人。

「金継ぎ」ってどんなものなの?「金継ぎ」された器のある生活ってどんな感じ??…という、本当に知識ゼロの方におススメです。

 金継ぎがやりたくなってうずうずする本です。ちょっとした金継ぎのやり方も載っていますが、ハウツーものではありません。その前のモチベーション上げ上げ本です。

※ 金継ぎのテクニカルなところを求めている方は他の本を選んだ方がいいです。

 書き手の小澤さんが金継ぎ修理された器の使い手や直し手のもとを訪ね、その方たちの日常を丁寧に書き留めています。ショップのオーナーや料理人、陶芸家など、金継ぎを愛する人々がその日常の中で、直された器を大切に使われている風景が描かれています。

  最大の見所は天才・櫛谷明日香先生が載っているコーナー(おっと、いきなり個人的な趣味に走った!)。P.86~とP.104~に掲載されています。通称「くっしー先生」と呼ばれていますが、私は心の中で「天才」とつぶやいてから「くっしー」とお声をおかけしています。天才が天才たる所以は凡人の私には説明ができないところにその天才性は証明されるのであります。はい。
 ただ残念なことに、今のところ天才・くっしーとコンタクトをとることはかなり難しいです。金継ぎ教室も金継ぎの依頼も。ショップの「in-kyo」に尋ねればいいのかもしれません。どこかの図書館で見かけることがあるとの極秘情報を得たのでありますが、真偽のほどは確かではありません。金継ぎ図書館にはいませんよ。

 それから金継ぎ界のナイスガイ堀道広さん。ナンセンスギャグ漫画を描きつつ、金継ぎ界でも他の追随を許さない「堀ワールド」を築き上げています。
堀さんの金継ぎ修理したものを見て「?」と思うかもしれません。が、堀さんの漫画同様にあれは個性を通り越したひとつの世界だと思います。それに対して「うまい、へた」と言い立てるのは野暮です。価値基準が違うんです。金継ぎ界の中で一人だけ評価軸をずらしたところで活動されている堀さんは、ある意味戦略家かもしれないですし、またとてつもなく純粋であるのかもしれません。堀さんとは10年ほど前に一度、昼飯をご一緒したことがあるんです。秋葉原の定食屋で。(ご本人は覚えていないと思います)
本当に気さくな方で、僕のつまらない話をニコニコしながらよく聞いてくれました。
金継ぎを習うならぜひ、堀さんの教室へ◎

 

 「金継ぎ一年生~本漆で、やきもの、ガラス、漆器まで直します。」 


金継ぎの本。「金継ぎ一年生」category: 〈本漆+樹脂〉金継ぎ 

監修・山中俊彦/文化出版社/2012年発行/値段¥1,500+税

対象者: 初心者~中級者

 この本の修理方針は伝統的な金継ぎをアレンジしたもので、合成樹脂接着剤とパテで器の修理を進めて、最後だけ本物の漆を使うというやり方です。

 なんといってもネーミングが秀逸です。金継ぎがやりたいけどちょっと怖いな~、難しいかな~ともじもじしている様子はまさしく小学校一年生ですよね。

 不安と期待とが入り混じったもじもじ一年生に向けて贈った「手取り足取り入門書」です。
 戸惑う一年生に「ここの下駄箱で靴を脱いでね」「トイレはこっちだよ」とやさしく案内してくれます。いきなり「漆使わなきゃダメ!」「金継ぎはかぶれてなんぼじゃ!」なんて体育会系のノリではありません。「逆上がりができなくてもオッケー。まずは前回りからやってみようね」というスタンスです。初心者には大変ありがたいお言葉です。

 この本の中で紹介されている修理方法は伝統的な金継ぎ方法そのものではなく、その金継ぎをちょっとアレンジしたものです。合成樹脂の接着剤とパテを使って修理を進め、最後の仕上げだけ漆を使います。合成樹脂を使うことで「かぶれ」のリスクを低くするとともに待ち時間の短縮化、作業工程の簡略化を図り、仕上げには漆でコーティングすることで食器としての安全性も高くする…という考えられた修理方法です。
 「一年生」にとってのハードルはやはり「かぶれ」「長い待ち時間」「煩雑な工程」だと思います。これはくじけます。欠けたピースをくっつけて2週間待つ…その間にかぶれ始め、死ぬほどのかゆみに3週間苦しめられる。やっとかゆみが収まってきたので作業を再開したら漆の調合を間違えて前の工程に戻る…。ああ、嫌だ。もう辞めた。—–なんてことになる気がするのです。一年生にしてみたらこの試練は過酷すぎます。ですのでひとまずの迂回措置として「合成樹脂+漆」というのは「あり」だと思います。私も初心者の方にはこの方法をお薦めします。

 わたしもこの本で「合成樹脂系金継ぎ」のベースを学びました。 私、初心者だったんです(だって、合成樹脂なんて使わなくても漆でできるんだからしょうがないじゃん)。なのでお世話になった一冊です。

 

 「金継ぎをたのしむ~陶磁器・漆器―大切なうつわの直し方


金継ぎの本。「金継ぎをたのしむ」category: 〈本漆〉金継ぎ 

監修・黒田雪子/平凡社/2013年発行/値段¥1,600+税

対象者: 上級者向け

 オール漆の伝統的な金継ぎ方法の本です。

 本の構成がシンプルですごくきれいです。見やすい。この本を監修している黒田さんの直した器や作業場などが雑誌などに載っていることがありますが、とにかくきれい。直しも上手です。センスも抜群。いや、本当に。

 漆の接着材やパテなどの作り方の説明がやや少な目なので、そこは金継ぎ図書館を見てフォローしてもらうとして(ん?金継ぎ図書館は分かりづらい?)、他には非のつけどころはありません。この本に載っているきれいな金継ぎされた器を見ているだけでも心が落ち着きます。

 あんまりごちゃごちゃと細かいところまで載っていても読むのがめんど―(というか読まない)。電化製品のマニュアルの類は98%読まない。なんとなく分かれば後は自分でやるからさ、だからざざっと流れだけ教えてくれればいいよ…という性格の方には特にお薦めです。

 

「ゼロからの金継ぎ入門~器を蘇らせる、漆の繕い」  おススメ 


金継ぎの本。「ゼロからの金継ぎ入門」category: 〈本漆〉金継ぎ 

 著者・伊良原満美、中村真/誠文堂新光社/2015年発行/値段¥2,000+税 

対象者: 中・上級者向け

 漆金継ぎの決定版(だと思います)!かなり詳細に解説がなされています。断トツ。

 

 「漆のみ」を使っての金継ぎのやり方を解説してあります。かなりの情報量です。
内容は少し専門的なほうに重心が置いてあります。

その分、初心者フォローには紙数が割けていないのは致し方ないことだと思います。中級以上の方(教室に通っている方とか、すでに金継ぎを習得されている方)におススメです。

 著者の伊良原さん、中村さんの勇気には感服します。この「本漆金継ぎど真ん中勝負」ってものすごく怖いことだと思います。私もこの金継ぎ図書館で情報を載せているわけですが、あくまでも「初心者向け」…ということで多少、逃げ道を作っています。(実はチキンくんです)
 日本中に本物のベテラン蒔絵師さんがいっぱいいらっしゃって、その人たちからみたら私の技術・知識など「お遊び」のようなものです。(間違っているところや、足りていないことも多いと思います) なので「本物の伝統的金継ぎとはこれだ!」なんて怖くて言うことができません。

 ですが、誰かがこうやって勇気を出して「これが私が考える本物の金継ぎです」と世に提示してくれることで他の人たちは(私も含めて)貴重な情報を仕入れることができます。
 「ここは、もうちょっとこうした方がよさそうだな~」と考えられるのも中村さんたちが叩き台として本を出版してくれた御蔭です。
 本当に偉大な仕事をしてくれたと思います。この本がより多くの人の手に渡ることを願います。

 

 

「金繕い工房~漆で蘇らせるつくろいの技」


金継ぎの本。「金繕い工房」category: 〈本漆〉金継ぎ 

 著者・原一菜/里文出版/1998年発行/価格¥2,500+税

対象者: 上級者向け

 他の金継ぎ本に比べると画像が少なく、文章が大半という古風な作りです。
 「目の眼ハンドブック」という渋いシリーズの一冊。
 お父さんは縁側でお茶をすすりながら骨董を直している。嫁や娘はまったくお父さんに興味なし。でもいいのである。お父さんは骨董とそれを直す密かなる愉しみのひと時さえあれば。

 直した蕎麦猪口をながめつつ、日本酒をちょびちょびとすする悦楽に勝るものはない。

 テクニックのマニュアル本を通り越し、教養本に近い趣さえ感じます。

 

 

「漆塗りの技法書~漆の特徴、基礎知識から各種技法までをわかりやすく解説」


金継ぎの本。漆塗りの技法書category: 漆藝技法全般

著者・十時啓悦、工藤茂喜、西川栄明/誠文堂新光社/2015年発行/価格¥2,800+税

対象者: 漆のお碗などを作ってみたい人

 さらさらと読んでみました。

 基本的には漆の「塗り」に関しての技法を解説しています。
 (※金継ぎに関しての解説はほんの少しです)

 写真が多いのでわかりやすいです。ここまで多くの写真付きの技法解説書は今までなかったと思います。
 初めての方が独学で漆を学ぶには今のところベストな本だと思います。

 木のお皿をお持ちの方にもお勧めできます。意外とよくあるのが木地仕上げ(オイルフィニッシュなど) のお皿に「カビ」がはえること。せっかく高いお金を出して買ったのにカビが生えちゃうと…がっくしですよね。
 そんな時に私がおススメしているのが「拭き漆」で蘇らせることです。木地仕上げの器が欠けた時にも「拭き漆+金継ぎ修理」で復活することができます。この本が手元にあればそれらの技法を使って修理できそうです。

 陶器に関しての金継ぎは10ページほどの解説です。その他、漆器の修理のやり方なども載っています。
 

  この金継ぎ図書館ではセルフ金継ぎをおススメしているわけですが、実は後ろめたさを感じているのです。
 それは金継ぎの道具・材料を揃え、金継ぎの技術を覚えたところで、数個の自分の器を直しただけで終了になってしまうところです。その先に繋がっていくものがないのです。
 これは金継ぎを勧めておいて何とも無責任であることよな~と反省しています。

 私も金継ぎ道具、材料、技術を活かせるルートを作っていきたいと思っているのですが、その一つのヒントとして本書も役立ちそうな気がします。金継ぎコンテンツともろにリンクするわけではないのですが、みなさんもそういった形で本書を手に取ってみてはいかがでしょうか?

 

 

「お直しとか」


金継ぎお薦め本。お直しとかcategory: 修理哲学(?)

著者・横尾香央留/マガジンハウス/2012年発行/価格¥1,400+税

対象者: 金継ぎの技法習得を終え、その遥か彼方を目指す人へ

なにゆえ「お直しとか」なの?とのご質問。ごもっともです。これ、金継ぎじゃないし。わかっております、わかっております。でもお薦めなのです、この本が。

直す喜びがなへんにあるのか。そのことが伝わってきます。
横尾さんの修理は依頼主の持つ「想い」と修理依頼品のもつ「ストーリー」に寄り添って、その隙間に不思議な世界を立ち上げます。マニュアル的な修理方法によりかかるでもなく、かといってアート的自己表現のためのお直しでもない。純粋に相手のことを想いやり、喜ばせたいと思う。ちょっとしたいたずら心も忍ばせて。
自分の部屋で「うひひひ…」とひとり含み笑いをしながら大好きなお友達へのプレゼントを用意している小学生の女の子のようです。本当に愉しそうです。

この感覚って大切な原点の一つだな…と横尾さんのおかげで思い出すことがでます。

横尾先生の珠玉の一言

お直ししてでも
着たい服があるというのは
しあわせなことだ。

お直ししてでも
着たいと思させる服をつくったひとも
またしあわせだ。

ひっそりと
その間をつなぐ名誉な仕事を
あたしはしている。

 

 

 

「死と身体~コミュニケーションの磁場」


内田樹category: 修理哲学(?)

 著者・内田樹/医学書院/2004年発行/値段¥2,000+税 

その他「最終講義」「邪悪なものの鎮め方」「呪いの時代」などなど

対象者: 金継ぎって「見えないものとのコミュニケーション」なんじゃない?と思ってしまった人

※ 金継ぎのことは一文字も書かれていません。

 

「 なにゆえ内田樹(先生)?!」とお思いの方、たくさんいらっしゃるかと思います。
わかります。そのお気持ち。
 「当然でしょ。内田さんを入れるのは」とお思いの方、いらっしゃったとしたら…大丈夫でしょうか?

 いやいや、それほど突拍子もないものをおススメしているつもりはないんです。
内田先生の身体論をベースにした思想というのは「工芸論」にそのまま転用することができると思います。内田先生の思想を補助線として借りれば、未だ誰も論じることができなかった身体感覚ベースの工芸論を展開することもできるような気がしています。(柳宗悦の方向性はちょっとそれとは違いますよね)

 当然、「『金継ぎ』ってそもそも何なんだろう?」って考えてしまい、ドツボに嵌まっている人にも多くのヒントをくれると思います。私は大いに参考にさせてもらっています。

 そんな面倒なことを考えたくない人にとっても内田先生の著書はおススメです。

 

ちなみにこの「金継ぎ図書館」サイトを作ろうと思った大きなきっかけが、内田樹先生の著書に出会ったからです。
もし、内田先生の本に出合っていなければ…少なくとも今のような「お役立ちサイト」にはなっていませんでした。多分、どこにでもある「おれ、こんなこともできるんですよ(すごいでしょ)」「注文、受け付けますよ(仕事ちょうだい)」サイトになっていたと思います。

 

どうしてそういうことになるのか、私にもわからない。よく分からないけれど、「いかなる根拠もなしに、人を傷つけ損なうもの」の対極には、「いかなる根拠もなしに、人を癒し、慰めるもの」が屹立(きつりつ)しなければ、私たちの世界は均衡を失するだろうということだけは分かる。

/「邪悪なものの鎮め方」P37

「邪悪なもの」の偶然の到来で私たちの人生は意味もなく、冗談のように壊されます。親友が死んだり、災害に見舞われたり。
でもそんな理不尽な現実の中でも小さな「秩序のようなもの」を立ち上げることはできると内田先生は言います。

ひとりひとりが手作りして、個有名の刻まれた「秩序のようなもの」をゆるやかに結びつけ、算術的に加算する

/「邪悪なものの鎮め方」P22

何の前触れもなく壊れる器。その「器を直す」という行為も一つの「ささやかな秩序」を自分の周りに手探りで作っていく行為なのかもしれないな…と思います。

 

 

 

 

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