【2020年最新版】金継ぎの勉強におすすめの本5選(初心者〜中級者向け)+その他の関連本

テクニック・コツ

 

「金継ぎの本」を買おうと思ってるんだけど、どの本がいいのかな??
本がいっぱいあって、わからない…

お嬢ちゃん、お嬢ちゃん、鳩さんが話を聞いてあげよう。

 

ふむふむナルホド…

お嬢ちゃんは金継ぎのこと、何も知らないチビッ子なんだから、どの本を選んでいいか分からないのは当然だね。

 

こんな時しか役立たないアホ館長に聞いてみよう◎

 

 

 

ん!?(鳩め!!)

…ということで、図書館運営者のプロの視点から、おススメできる金継ぎ本を、ご紹介させていただきたいと思います。

私は、「金継ぎ図書館・館長」を名乗っている手前、市販されている全ての「金継ぎ本」に目を通しています。(スゴイ!)
※ 偉そうに書いていますが、金継ぎ本の出版数としては10冊程度なので、網羅するのは簡単なんです◎

 

 

 

現在(2020/04月)おススメ金継ぎ図書5選

 

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●【入門・初心者】におススメ
 ・はじめての金継ぎ/坂田・中島
 ・おおらか金継ぎ/堀 道広

●【初~中級者】におススメ
 ・金継ぎ上達レッスン/持永 かおり
 ・ゼロからの金継ぎ入門/伊良原・中村

合成樹脂を併用した
【“なんちゃって金継ぎ”初級者】におススメ

 ・金継ぎ一年生/山中 俊彦

 

 

え!……(あらやだ)。

 

合成樹脂の併用??

何それ??

そうなんです。
金継ぎには「本当の金継ぎ」+「なんちゃって金継ぎ」2種類…の計3種類のやり方があります

自分はどの金継ぎがやりたいのかがわからないという方はこちらのページを参考にしてください↓

 

金継ぎ図書館では「本物の金継ぎ」を学ばれることを強くおススメしています。
せっかくやるんだったら、日本の古来からの伝統工芸に通じる「本物」をやった方がいいですよ~◎

 

 

本を使ったおススメの学習法

金継ぎ図書館では「本、単品」で学習するのではなく、「本+Web」で学習するやり方をおススメしています。

 

【おススメの《本+Web》独学方法】
▪▪▪

まずは金継ぎ本を一冊買います。

本は分かりやすいけど、圧倒的に情報が足りないので、HP/動画を見ながら得た情報をどんどん書き込みます
それから実際に自分がやった体験から得た知見を躊躇なく本に書き込んでいく
すると、その本が唯一無二の『導きの書』となっていきます。

「情報を書き加える」という行為を通じて、自分の頭の中も整理されていきます。
そして、「金継ぎ作業の一つ一つ」や「漆などの素材」に対するそれまでバラバラだった理解が、有機的な関係性を持った理解へと変容していきます。
 
このあたりまで理解が進んでいくと、自分なりにまとめた情報が「他の人の役に立つ」情報となります
ぜひこの段階まで行った人はSNSやブログ、YouTubeなどで発信していってください。
続けていくうちに、必ず「教えて欲しい」という声があなたの元に届きます
 
そうなればいよいよあなたの技術を「次の人に」伝えるべき時がきたということです。
 
「伝統工芸」というものは、先人から伝えられてきた技法の中に「次の者に伝えよ」というメッセージが必ず刻み込まれています。
ただし、人間的成熟を果たせなかった者は、いくら高い技術領域に達しようとも、そのメッセージが聞こえることはありません。
 
「教えてください」と「次の者に伝えよ」
この二つの声が聞こえた時、それが「伝統工芸の担い手」になった証です
 

 

 

 

金継ぎブック・レビュー

 

   鳩さん`s Best Choice!

はじめての
金継ぎ
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▸ Amazonで見る

監修・坂田 太郎/中島 靖高
/世界文化社/2018年発行/値段¥1,600+税 
対象者 初級者向け
お薦め度 4.5


現在、金継ぎ図書館「イチオシ」の金継ぎ本。

初心者にちょうどいい情報量。
わかりやすい文章と、レイアウトがすごく見やすい本です。

  ナイスポイント!

・金継ぎのカテゴリー分け、構成、紙面のデザインともに上手にまとめられており、スッキリしていて、とても読みやすい。

・ページの下部の1/4スペースに「こうなっちゃった場合ってどうしたらいいの?」等のTipsが載っている。
初心者が失敗しがちなところのフォローや、リカバリー方法なども載っていて、「痒い所に手が届く感じ」がする◎

・入門・初心者には程よい情報量で、基本的な情報はだいたい網羅されている。

・紙面に適度な「余白」があり、また、鉛筆書きしやすい紙質なので、自分なりの重要情報を書き足しやすい。(→どんどん書き込んでいって、原型を留めないくらいの「金継ぎ・秘伝の書」にしてください◎)

 
  
 
気になる点

・監修者が2人いて、ちょっとずつ2人の言っていることが違う。
よく言えばそれぞれのやり方を知ることができるけど、初心者にとっては混乱を招く可能性があるので、基準を統一した方が良かったかもしれないな~と思うところ。
  
  
  こんな人におススメ

・Amazonでは堀さんの本【おおらか金継ぎ】の方が、断然、売れていそうな感じですが、こちらの本も互角(以上)におススメできます。

はじめての金継ぎ
世界文化社
¥3,520(2024/03/28 16:55時点)

 

 

 

おうちでできる
おおらか金継ぎ
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著者・堀 道広
/実業之日本社/2018年発行/値段¥1,800+税 
対象者 初級者向け
お薦め度 4.0


著者の堀さんの人柄が滲み出るようなゆるい(おおらかな?)語り口と、独特な手書き文字&ナンセンス・イラストで、楽しくナビゲートしてくれる一冊です。

  ナイスポイント!

・失敗したときのリカバリー方法についても少し解説されている。←これは初心者さんにとってかなり役立つ情報です。

・情報量がちょっと少ないようにも感じますが、しっかりと精査された情報が的確に載っているといった印象です。
初心者さんにとってはやたらと情報が多いと返って混乱しやすくなります。
入門・初心者の段階で理解した方がいい情報と、もう少し経験を積んでから取り込んだ方がいい情報とがあります。
そこらへんの情報の選別が的確で、上手にまとめられているな~といった感じです。

・金継ぎ図書館的にはドンピシャな余白があり、かつ鉛筆で書き込みやすい紙質なので、どんどん自分なりの情報を加えていけます。頑張って書き込んでいけば「オリジナル金継ぎテキスト」に育てることができます!
※ 堀さんのゆるいイラストや手書き文字があるお陰で(←そもそも落書きっぽいので)、自分で「書き込む」際の心のハードルが低く済むのはいいな~と思います◎

・簡単にではありますが、「かすがい継ぎ※1の“なんちゃって版”」、「焼き継ぎ※2」のやり方が解説されている。
・「ガラス継ぎ」「呼び継ぎ※3」のやり方も少し詳しく載っている。
↑これら4つの修理方法が載っている本はこの堀さんの本だけだと思います。貴重です◎

※1…中国や台湾での陶器の修理方法で、ホチキスで止めたような修理方法
※2…低温で溶ける(といっても600℃とかですが)釉薬のようなものを接着剤として用い、陶芸の窯で焼いてくっつける修理方法
※3…割れた箇所に他の器の破片をくっつける修理方法
 
 
  気になる点 

・「かすがい継ぎ」や「焼き継ぎ」の内容をもう少し突っ込んで研究・解説してくれたら有難かったです。
↑この情報量だと初心者さん(だけでなく、僕にとっても)がチャレンジするにはなかなか厳しいかな?と思うところです。

・「変わり種の修理方法」にページを割いている分を、「ベーシックな金継ぎ修理方法」のさらに丁寧で詳しい解説に回してもらえていたら、初心者の人にとってベストな一冊になっていたのでは?とも思います。
(けど、これって無理難題ですよね~。。。本を出版するときって、編集者さんから、他の金継ぎ本との差別化を求められます。その本ならではの「分かりやすい特徴」が無いと本屋に置いてもらう営業もしづらいのです。いや~、、悩ましいところです)
 
 
  こんな人におススメ

・内容のクオリティとしては上記の【はじめての金継ぎ】と甲乙つけがたい感じです。どちらも良いです◎
「堀さんのテイスト(ゆるい感じ?)」がお好きな方は【おおらか金継ぎ】がおススメで、もうちょっと「ピシッと」している方が好きという方は【初めての金継ぎ】がおススメといったところでしょうか。
(↑つまり個人的な「好き嫌い」で判断してください…ってことです◎)
 
  
  余計なはなし

この本の著者・堀さんは「ナンセンス・ギャグ漫画」と「ナンセンス・イラスト」を描く、有名な漫画家/イラストレーターさん(!)なんです。(ググってみるといっぱい作品が出てきますよ~◎)
そして金継ぎ界でも他の追随を許さない「堀ワールド」を築き上げている方です。

堀さんの金継ぎ修理したものを見て「?」と思うかもしれません。
やたらと修理箇所が「主張」している。しかも「なんだか凸凹している」(笑)

ですが、これって、堀さんの画風と同様に個性を通り越したひとつの世界観なんです。それに対して「うまい、へた」と言い立てるのは野暮です。価値基準が違うんです。
堀さんははなから「技術の高さ」とか「クオリティの高さ」なんかを目指していない。(ように見えます。違っていたら済みません)

金継ぎ界ではほとんどの人が「技術の高さ」を目指している中、一人だけ評価軸をずらしたところで活動されている堀さんは、ある意味戦略家かもしれないですし、またとてつもなく純粋であるのかもしれません。

これも個人的な話になりますが、堀さんとは10年ほど前に一度、昼飯をご一緒したことがあります。秋葉原の定食屋で。(ご本人は覚えていないと思いますが)
本当に気さくな方で、僕のつまらない話をニコニコしながら聞いてくれました(笑)

おうちでできるおおらか金継ぎ
実業之日本社
¥3,960(2024/03/29 08:37時点)

 

 

 

繕うワザを磨く
金継ぎ上達レッスン
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監修・持永 かおり
/メイツ出版/2017年発行/値段¥1,900+税 
対象者 (初級~)中級者向け
お薦め度 4.0


 

  ナイスポイント!

・写真が多く、一枚一枚が大き目なので、情報量が多いように感じる。

 

  気になる点 

・レイアウト、デザインが他の金継ぎ本と比べるとちょっと見づらい。
写真がぎゅうぎゅうに掲載されているので、ちょっとした圧迫感を感じる。(←その分、情報量が多いということでもありますが)

 

  こんな人におススメ

 

 

 

 

ゼロからの金継ぎ入門
器を蘇らせる、漆の繕い
▪▪▪

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著者・伊良原 満美/中村 真
/誠文堂新光社/2015年発行/値段¥2,000+税 
対象者 中級者向け
お薦め度 4.0


 

 

 

  ナイスポイント!

かなりの情報量で、内容は少し専門的なほうに重心が置いてあります。

 
  気になる点 

・「大きな欠け」を修理する際に「シャモット」とうい素材(漆の世界では使わない材料で漆屋さんでも取り扱っていない。陶芸の素材)を用いた修理方法を載せているところが、私としては引っ掛かるところ。
一般的には「木粉」が使われることが多いので、それを用いた解説をしていただけていたら…と思うところです。
(↑木粉の代わりにシャモットを選んだそれなりの理由があるのだろうと思いますが)

・修理のカテゴリー分けがちょっとわかりづらい。
 
 
  こんな人におススメ

・「初級者」というよりは初級から抜け出した人(教室に通っている方とか、すでに金継ぎをやったことがある方)におススメです。
 
 
  余計なはなし

僕の個人的な話ですが、この本の著者のお二人は僕の東京芸大時代の先生で、とてもお世話になった方です。
伊良原さんとは2,3度お話させてもらったくらいの間柄なのですが、一度、親身になってアドバイスをいただいたことがありました。
僕が大学に入学して早々、「なんか芸大ってつまんねぇや。こんな大学辞めた方がいいのかな…」とヤサグレていた時(←調子に乗った勘違い系芸大生のあるあるです)、新勧コンパのお酒の席でたまたま伊良原さんと話しました。
「どう?大学は楽しい??」と聞かれ、

※1…「入学して早々の酒の席」ですが、5浪していたので(!)すでに年齢は23歳でした◎

ゼロからの金継ぎ入門: 器を蘇らせる、漆の繕い
誠文堂新光社
¥1,468(2024/03/29 02:24時点)

 

 

 

金継ぎ一年生
本漆で、やきもの、ガラス、漆器まで直します
▪▪▪

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監修・山中 俊彦
/文化出版社/2012年発行/値段¥1,500+税
対象者 接着剤を使ってもOKな初心者向け
お薦め度 3.5


【注意!】

この本で紹介している修理のやり方は伝統的な金継ぎをアレンジしたもので、合成樹脂接着剤とパテで器の修理を進めて、最後だけ本物の漆を使うというやり方です。
本当の伝統的な金継ぎのやり方ではありません。(「なんちゃって金継ぎ」です)

  ナイスポイント!

・表紙のデザイン、タイトルが秀逸!インテリアとして飾っとけるレベルです◎

・最終仕上げのコーティング作業のみ、本漆でおこなうことで食器として使えるように安全性を高くする一方、それ以前の接着作業や下地作業を、乾きが早く、扱いが簡単な合成樹脂をのものを使います。
そうすることで、「かぶれ」のリスクを低くするとともに待ち時間の短縮化、工程の簡略化を図る…という修理方法です。

・初心者にとってのハードルはやはり「かぶれ」「長い待ち時間」「煩雑な工程」ですが、それらのハードルを回避するやり方として、この「合成樹脂+漆」という方法は「あり」だと思います。

「“樹脂+本漆”金継ぎ」の本をお探しなら、この本がベストです◎

  
  気になる点 

・大切な思い出が詰まっている器を「合成接着剤」や「合成樹脂のパテ」で直したくない…という方にはおススメできない本です。
・解説が「ややざっくり」なので、痒いところにちょっと手が届かない…ってことがあるかもしれません。
けど、「基本的な教科書」としてはすごく役に立ちます。
(解説が足りないところはHPやYouTubeで調べて、自分で書き足していけば愛着の持てる本になります◎)
・写真の配置、大きさがバラバラすぎて、ちょっと見づらい。
・p10に「使用後、筆はテレピンで洗うように」…と書いてありますが、これは「油で洗う」方がベターかと思います。(テレピンで洗うと筆がどんどん劣化していきます)

‣使用後/洗い方Page  ‣使用後/洗い方動画
  
  
  こんな人におススメ

・「伝統的な本物の技法にこだわらない人」、「合成樹脂を使ったって気にしない人」には一番おススメの本です。
  
  
  余計なはなし

・私もこの本で「合成樹脂系金継ぎ」のベースを学びました◎
 …じつは私、「樹脂系金継ぎ」ってやったことなかったのです。(だって、合成樹脂なんて使わなくても本物の漆で金継ぎできるんだから、やるわけなかったんですよね~)
お世話になった一冊です。

 

 

 

 

「金継ぎ技法書」以外のお薦め本

 

 

金継ぎのすすめ
ものを大切にする心
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編集・小澤 典代
/誠文堂新光社/2013年発行/値段¥1,600+税
対象者「金継ぎのあるライフスタイル」を知りたい人向け
お薦め度 3.0


【注意!】

この本、「金継ぎ関係本」なのですが、「技法書」ではないので、こちらのカテゴリーに入れさせてもらいました。

 

書き手の小澤さんが金継ぎ修理された器の「使い手」や「直し手」のもとを訪ね、その方たちの日常を丁寧に書き留めた本です。
ショップのオーナーや料理人、陶芸家など、金継ぎを愛する人々がその日常の中で、直された器を大切に使われている風景が描かれています。

 

  ナイスポイント!

「金継ぎ」ってどんなものなの?「金継ぎされた器のある生活」ってどんな感じ??…を知ることができます。


  気になる点 

ざっくりとした「金継ぎのやり方」解説もちょっと載っていますが、「ハウツー本」ではありません
  
  
  こんな人におススメ

金継ぎの具体的なハウツーではなく、「金継ぎをもっと身近に感じたい」「金継ぎのあるライフスタイルに憧れている」…といった人におススメの「読み物本」です。
  
  
  余計なはなし

本の中には金継ぎ師・櫛谷明日香さんが載っているコーナーがあります。(P86~とP104~に掲載されています)
櫛谷さんは僕の親友の宮下智吉さん(漆芸家/金継ぎ師)の奥さんで、自宅で金継ぎ教室を開かれています。
僕の個人的な話になりますが、櫛谷・宮下さん宅にはたまに泊まりに行くことがあります。
泊まった次の日がたまたま櫛谷さんの金継ぎ教室…ということも何回かあり、ちょっと覗かせてもらったことがあるのですが、教室の雰囲気はとてもゆったりとしていました。
いい意味で「緊張感」はほぼありません(笑) 櫛谷さんのところの二人の小さな娘がバタバタと遊んでいる中、教室の生徒さんもその子たちと遊びつつ、金継ぎ作業も進める…といった楽しそうな感じでした。

「ある程度ピリッと緊張感のある中で金継ぎ作業に集中したい」…と思う方も多いかと思いますが、櫛谷さんの金継ぎ教室のように「弱いモノ、(ある意味)余計なモノを排除せずに一緒に時間を共有していく」…というのも一つの在り方かな~と思いました。
だって、よく考えたら↑これってまさしく「金継ぎ」の一つの思想なんですよね◎

金継ぎのすすめ: ものを大切にする心
誠文堂新光社
¥1,244(2024/03/28 19:25時点)

 

 

 

漆塗りの技法書
漆の特徴、基礎知識から各種技法までをわかりやすく解説
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著者・十時 啓悦/工藤 茂喜/西川 栄明
/誠文堂新光社/2015年発行/価格¥2,800+税
対象者 漆のお碗などを作ってみたい人
おススメ度 3.0


基本的には漆芸全般の「塗り」に関しての技法を解説しています。
(※「金継ぎのやり方」に関しての解説は少し載っています

 

  ナイスポイント!

・写真が多いので見やすいです◎
ここまで多くの写真付きの技法解説書は今までなかったと思います。
初めての人が独学で漆芸全般を学ぶには今のところベストな本だと思います。

・木のお皿をお持ちの方にもお勧めできます。意外とよくあるのが木地仕上げ(オイルフィニッシュなど) のお皿に「カビ」がはえること。せっかく高いお金を出して買ったのにカビが生えちゃうと…がっくしですよね。
そんな時に私がおススメしているのが「拭き漆」で蘇らせることです。木地仕上げの器が欠けた時にも「拭き漆+金継ぎ修理」で復活することができます。この本が手元にあればそれらの技法を使って修理できそうです。

  
  気になる点 

「陶器の金継ぎ」に関しては10ページほどの解説です。その他、漆器の修理のやり方なども載っています。
  
  
  こんな人におススメ

 

 

 

お直しとか
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金継ぎお薦め本。お直しとか

著者・横尾 香央留
/マガジンハウス/2012年発行/価格¥1,400+税
対象者: 金継ぎの技法習得を終え、その遥か彼方を目指す人へ


なにゆえ「お直しとか」なの?とのご質問。ごもっともです。これ、金継ぎじゃないし。わかっております、わかっております。でもお薦めなのです、この本が。

直す喜びがなへんにあるのか。そのことが伝わってきます。
横尾さんの修理は依頼主の持つ「想い」と修理依頼品のもつ「ストーリー」に寄り添って、その隙間に不思議な世界を立ち上げます。マニュアル的な修理方法によりかかるでもなく、かといってアート的自己表現のためのお直しでもない。純粋に相手のことを想いやり、喜ばせたいと思う。ちょっとしたいたずら心も忍ばせて。
自分の部屋で「うひひひ…」とひとり含み笑いをしながら大好きなお友達へのプレゼントを用意している小学生の女の子のようです。本当に愉しそうです。

この感覚って大切な原点の一つだな…と横尾さんのおかげで思い出すことがでます。

横尾先生の珠玉の一言

お直ししてでも
着たい服があるというのは
しあわせなことだ。

お直ししてでも
着たいと思させる服をつくったひとも
またしあわせだ。

ひっそりと
その間をつなぐ名誉な仕事を
あたしはしている。

 

 

 

死と身体
コミュニケーションの磁場
▪▪▪内田樹

著者・内田 樹
/医学書院/2004年発行/値段¥2,000+税


その他「最終講義」「邪悪なものの鎮め方」「呪いの時代」などなど

対象者: 金継ぎって「見えないものとのコミュニケーション」なんじゃない?と思ってしまった人

※ 金継ぎのことは一文字も書かれていません。

 

「 なにゆえ内田樹(先生)?!」とお思いの方、たくさんいらっしゃるかと思います。
わかります。そのお気持ち。
 「当然でしょ。内田さんを入れるのは」とお思いの方、いらっしゃったとしたら…大丈夫でしょうか?

 いやいや、それほど突拍子もないものをおススメしているつもりはないんです。
内田先生の身体論をベースにした思想というのは「工芸論」にそのまま転用することができると思います。内田先生の思想を補助線として借りれば、未だ誰も論じることができなかった身体感覚ベースの工芸論を展開することもできるような気がしています。(柳宗悦の方向性はちょっとそれとは違いますよね)

 当然、「『金継ぎ』ってそもそも何なんだろう?」って考えてしまい、ドツボに嵌まっている人にも多くのヒントをくれると思います。私は大いに参考にさせてもらっています。

 そんな面倒なことを考えたくない人にとっても内田先生の著書はおススメです。

 

ちなみにこの「金継ぎ図書館」サイトを作ろうと思った大きなきっかけが、内田樹先生の著書に出会ったからです。
もし、内田先生の本に出合っていなければ…少なくとも今のような「お役立ちサイト」にはなっていませんでした。多分、どこにでもある「おれ、こんなこともできるんですよ(すごいでしょ)」「注文、受け付けますよ(仕事ちょうだい)」サイトになっていたと思います。

 

どうしてそういうことになるのか、私にもわからない。よく分からないけれど、「いかなる根拠もなしに、人を傷つけ損なうもの」の対極には、「いかなる根拠もなしに、人を癒し、慰めるもの」が屹立(きつりつ)しなければ、私たちの世界は均衡を失するだろうということだけは分かる。

/「邪悪なものの鎮め方」P37

「邪悪なもの」の偶然の到来で私たちの人生は意味もなく、冗談のように壊されます。親友が死んだり、災害に見舞われたり。
でもそんな理不尽な現実の中でも小さな「秩序のようなもの」を立ち上げることはできると内田先生は言います。

ひとりひとりが手作りして、個有名の刻まれた「秩序のようなもの」をゆるやかに結びつけ、算術的に加算する

/「邪悪なものの鎮め方」P22

何の前触れもなく壊れる器。その「器を直す」という行為も一つの「ささやかな秩序」を自分の周りに手探りで作っていく行為なのかもしれないな…と思います。

 

 

 

 

金継ぎ本のメリット

金継ぎを学んでみたいのだけど、どうやって学ぼうかな~と考えた場合、学ぶ手段としては以下のやり方が挙げられます。

 ① レクチャー本を購入する
 ② ホームページを見る
 ③ YouTube動画を見る
 ④ 教室に通う

…といったやり方がありますが、正直言って書籍のみで金継ぎを習得する」というのはかなり難しいです。
もちろん「書籍のみで学習しなければならない」なんてことはないわけで、HPやYouTubeを見つつ、これらを組み合わせて学ぶのが一番効率がいい。

そうなると「金継ぎ本って必要ないんじゃない??」と思う方もいると思うのですが、「本を併用すると学習効率がよい」というのが私自身の経験上の実感です。

特に金継ぎの分野においてはここ2,3年で、初心者向けに丁寧に解説された良書が出版されてきたので、これならみなさんにもお薦めできるなと思ったわけです。

 

さらに、私が金継ぎ本をお薦めする理由として、以下のメリットが挙げられます。

【金継ぎ本を買うメリット】

  1. 構成、デザインともに一番体系的にまとめられており、見やすい※1
  2. 情報にアクセスしやすい※2
  3. ページの余白に自分が重要だと思う情報を書き込める※3

※1.…書籍化するには何人ものプロ(編集者さん、デザイナーさん、イラストレーターさんなど)関わっているので、やっぱり一番見やすい場合が多い。

※2.…
・作業中に本を開いて、確認しながら作業ができる。
・繰り返し読んでいくうちに、どこらへんのページにどのような情報が載っているかを身体が記憶していくので、瞬間的に情報アクセスができるようになる←ネット検索よりもはるかに早い!
・いつでもパラパラとページを眺められるので、金継ぎのイメージが体に浸み込んでくる。

※3.…情報をどんどん書き込んでいけば、自分オリジナルの「最も使い勝手の良い道具」として育てることができる

 

 

金継ぎ本の「道具化」のススメ

工芸的に考えると、上記の2と3の意味がとても重要です。

金継ぎも含めて「工芸」という分野では、お店で買った完成品の道具でも、必ず自分で手直しします。
そうすることで、次第に自分の感覚に馴染むようになっていきます。むしろ「そうすることでしか」「自分の道具」にはなっていきません。
そして、「自分の身体にフィットした道具」というのは今度は自分を導いてくれるようになります。

例えば木を削る刃物→身体をどう傾ければいいのか?どのタイミングで手首を返せばいいのか?刃物をどの角度で素材に当てて、どのくらい食い込ませ、どのくらい…を教えてくれるようになるわけです。微細なシグナルを送ってくる。
道具とコミュニケーション。道具からも私に何かを伝えてくれる。無意識に私がそれに反応している。

「自分の道具」になっていない道具を使った場合にはこの「語り掛け」は起こらない。道具は語り掛けてこないわけです。

 

本というものも工芸の道具と同様、自分の手を加えることによって「自分の(身体にフィットする)道具」となっていきます。自分の道具となった本は、自分の知性を導いてくれるようになります。

そこに書かれていないことでもとっさに「もしかして、これってこうゆうこと?」と何故か「分かる」ときが出てくる。応用が利くようになる。

HPやYouTubeのデジタルな情報というのは残念ながら工芸的な意味でいう道具化をすることができません。自分で手を加えることができない限り、その情報との間に「壁」があり、自分にフィットさせることができないわけです。

 

 

 

デメリットとしては…

  1. 紙という媒体なので、どうしても情報量が少ない
  2. 作業の実際の動作が見れない
  3. 躓いたときに質問ができない

…といった点があげられますが、1と2に関してはHPやYouTubeを見ることでかなりの部分を補完することができます。
3については教室に通うのが一番いいのですが、ネット上の金継ぎコミュニティーを探してそこで質問することもできるかと思います。