小さく欠けた白いマグカップの金継ぎの方法 1/3 ~素地固めまで(岡田直人の器)

欠けた岡田直人のマグカップの金継ぎ修理

 

 

size19ファイツ!!

 

※ 口元が一か所、小さく欠けたカップの金継ぎ修理のやり方を説明していきます。本物の漆を使った修理方法ですので「かぶれる」可能性があります。ご注意ください。

今回は金継ぎの工程のうち〈欠けた部分の器の素地をやすりで削る~欠けに漆を浸み込ませるまで〉のやり方を解説していきます。

 

 

金継ぎとは


欠けたり、割れたりした器を漆で直す日本の伝統技法です。漆で接着し、漆で欠けや穴を埋め、漆を塗って、最後に金粉や銀粉を蒔いてお化粧をします。

本漆金継ぎでは漆を使いますので「かぶれ」のリスクがあります。ですがそのリスクを引き受けてでもやるだけの価値があると思います。なんといっても「大切な想い」の詰まった器が直せるのですから。

そして金継ぎで器がよみがえった時にきっと不思議な感じがすると思います。「直った」というより、「生まれ変わったみたい」と。別もののようにも見えてしまう。

どうして日本人はこんな不思議な直し方をしたのでしょうか?
そんな不思議な感覚をぜひ味わってください。

 

 

ちょっと待ってください…私、金継ぎ初めてなんですけど、どんな道具とか材料を買えばいいんですか?どこで買えるんですか??という方へ

↓ こちらのページを参考にしてください◎

▸ 本漆金継ぎで必要な道具と材料/そのお値段と買えるお店のご紹介

 

 

 

作業を始める前に…

 金継ぎでは「本物の漆」を使うので、直接、漆に触れると「カブレる」可能性が高くなります。「ディフェンシブ」に行きましょう。ゴム手袋は必需品です◎

 

 

 

 

直す器 information


  information 

  • 器の作り手 : 岡田直人さん
  • 器 : 白い(乳白色)マグカップ
  • 釉薬 : ツルツル・ピカピカのガラス質
  • 破損個所 : 口元(ふちこぼれ) 1 箇所
  • 破損状態 : 欠け(大きさ 横10㎜×縦6㎜前後)
  • 仕上げ : 金粉仕上げ希望

 

いきなり金継ぎの作業に入る前に器を入念に診察します。

  • 釉薬
  • 破損個所
  • 破損状態

をチェックしてください。

 

今回の依頼品の損傷は「欠け」が一箇所ですが、特に気をつけないといけないのが欠けた場所の近辺に「ひび」がないか?です。

割れたり欠けたりした場合、それと同時にひびが入ることがよくあります。

このひびが特段、見えづらい場合があるのでいろいろな角度から見たり、光の当て方を変えたりしながら入念にチェックしてください。

あとはほんの小さな欠けも見落としがちなのでそれも気を付けて診察してください。

 金継ぎ修理の方法。欠けた部分のチェック。

このような口元の欠けはよくある修理依頼です。
この段階で欠けの「深さ・厚み」から判断して、欠けの充填に「錆漆さびうるし(ペースト)」でいくのか、それとも「刻苧漆こくそうるし(パテ)」でいくのかを決めます。

今回は欠けが浅いので錆漆さびうるし(ペースト)でいきます。(錆漆は「薄付け」する修理箇所に、刻苧漆は「厚付け」する修理箇所に…と憶えてください)

私の大体の目安は深さ・厚み3㎜くらいまでを錆漆さびうるし(ペースト)で充填します。2~3回に分けて少しづつ充填します。

それ以上の深さ・厚みの充填が必要な場合は刻苧漆こくそうるし(パテ)でやります。

 

金継ぎ修理の方法。欠けた部分の状況を確認する。

今回の器は、乳白色、ツルツル・ピカピカの釉薬です

ガラス質の釉薬の場合、器に麦漆むぎうるし(接着剤)や錆漆さびうるし(ペースト)がついて汚れてしまったとしても比較的簡単に落とせるので、マスキングの必要はないなと判断します。(ただ今回は参考のためにマスキングをおこないました)

 

 

 

01 器の素地調整 / 素地の削り


道具    ①リューターのダイヤモンドビット ▸ 作り方 ②ダイヤモンドやすり 〇マスク 〇水を固く絞ったウエス
▸ 道具・材料の値段/販売店


今回、使うダイヤモンドビットは先っちょが「球」ではなく、「円柱型」や「砲弾型」がおススメです。

ダイヤモンドビットは市販のものを購入したままだと使いづらいので、簡単なカスタマイズをすると使いやすくなります。
▸ ダイヤモンドビットのカスタマイズの方法 

 

 

 

 金継ぎ修理の方法。欠けた部分の周りをリューターのダイヤモンドビットで面取りしていく。

そしてそれを使った他の作業例です。
素地調整 エッジの面取る方法

まずはリュータ―で破損個所を少し削ります。

 金継ぎ修理の方法。リューターで欠けた部分を削っていく。(修理人によってはこの工程を行う人もいれば、行わない人もいますので、参考までに)

ガラス質の釉薬部分に傷をつけて漆の食いつきを良くするためと、ほんの少し面取りをおこないます。
※ 面取り…割れた器の断面のエッジを斜めに削ること

リュータ―のビットはダイヤモンドのビットを使います。
リューターのビットはホームセンターなどで¥300~で売っています。「ダイヤモンド」の粒子が付いたものを買ってください。これを使えば陶器も削れます◎

 

金継ぎ修理の方法。陶器の欠けのエッジを削る

軽くエッジを削っていきます。

ビンビンに立っているエッジ箇所はしっかり削ってしまいます。

 

金継ぎ修理の方法。欠けのエッジを削る

リュータ―での削り作業は粉塵が出ますので、マスクをする方がいいです。

削り作業が完了したら水を固く絞ったウエス(使い古しの布とか)で粉を拭き取ってください。

 

 

 

02 器の素地を漆で固める


 この作業は何のためにやるかというと、次の工程で行う「接着作業」の
接着力がより大きくなるようにです。

 …が、この「固め」作業に関しては職人さんによって意見の分かれるところでもあります。「やっちゃダメ」という方もいます。

 金継ぎ図書館の見解としては「どっちでもいいんじゃないでしょうか?」です。一応、「セオリー」として固めのやり方を載せておきます◎

 

  道具  ③小筆 ⑤練りべら(大き目のヘラ) ▸作り方 ⑥作業板(ガラス板) ▸作り方
  材料  ①テレピン ②ティッシュ ④生漆 ⑦サラダ油

▸ 道具・材料の値段/販売店


 ※ この作業で使う「小筆」は安価な筆にしてください。陶器の断面に擦り付けるので、毛先が痛みやすいのです。蒔絵筆だとモッタイナイです。

 

 まずは筆をテレピンで洗って筆の中の油を洗い出します。
 ▸ 詳しい作業前の筆の洗い方

 【 作業前の筆の洗い方 】

  1. 作業板の上に数滴テレピンを垂らす。
  2. その上で筆を捻ったりしてテレピンをよく含ませる。
  3. ティッシュペーパーの上でヘラで筆を優しく押さえる。

 

 

 

 

次に、浸み込みやすくするために生漆をテレピンを混ぜて希釈してください。作業板の上でヘラを使ってよく混ぜ合わせます。

 

 【 生漆の希釈 】

【体積比/目分量】… 生漆 10:3 テレピン ※おおよそ

 

それを欠けた場所に浸み込ませていきます。
※ テレピンの代わりにアルコール、灯油でもオッケーです◎

 

 

 

それでは作業スタートです◎

金継ぎ修理の方法。欠けた部分に生漆を筆で塗っていく。皆さんは漆が直接手につかないようにちゃんと「ゴム手袋」をしてください。

 

金継ぎ修理の方法。漆を筆で塗っていく。

 

このあと、ティッシュで優しく押えて余分な漆を取ります。

↓他の器修理の画像ですが、ご参考までに。

割れた湯呑茶碗の金継ぎ修理方法

断面すべてに塗り終わったら、表面に残った漆をティッシュで吸い取ります。

ティッシュを折り畳んでください。

 

割れた湯呑茶碗の金継ぎ修理方法

それを漆を塗った部分に優しく押し当てます。

 

割れた湯呑茶碗の金継ぎ修理方法ティッシュに漆がほとんどつかなくなるまで繰り返します。ティッシュの「当てる面」はどんどん換えていってください。

 

素地固めについての詳しい説明です。
素地固めのやり方

 

拭き取り作業が終わったら湿度の高い場所(65%~)に置いて漆を硬化させます。そう、漆は空気中の水分を取り込んで硬化するのです。不思議な樹液ですね◎

湿度が高い場所…って、お風呂場にでも置けばいいんですか??

 風呂場…でもいいのですが、風呂場って湿度が100%近くにまでなるので、漆を乾かすにはちょっと「どぎつい」環境だと思います。(漆は急激に硬化すると「やけ」「縮み」といった厄介な現象が起こりやすくなります)

もうちょっとソフトな環境を用意してあげましょう◎ そう、実は漆は”やさしさ”で乾くのです。よ◎

 

 【 簡易的な漆乾燥用の風呂 】

湿度が保てる空間を用意します。
※ 水を固く絞った布を中に入れて湿度を高くしてください。

↑ こんな感じでいかがでしょうか?

え!段ボール…。こんなんでもいいんですか??

 はい、大丈夫です◎「段ボールなんてダサくて嫌!」という方は↓のページを参考にバージョン・アップさせていってください。

▸ 段ボール漆風呂の作り方

 

湿度のある場所(65%~)に6時間くらい置いて漆を硬化させてください。

 理想的には「漆の乾きかけ」のタイミングで次の接着作業に入れたらステキです。けど、そのタイミングで次の作業に入るのが難しいようでしたら、なるべく1,2日後くらいに次の作業に取り掛かるようにしてください。

 とはいえ、↑これは「厳密に言うと」ということですので、1~2週間空いてしまっても「ヤバイ!」ってことにはなりませんのでご安心ください◎

 

 

塗り終わったら油で筆を洗います。
 ▸ 詳しい作業後の筆の洗い方 

※ 油で洗わないと筆の中に残った漆が硬化するので次第に筆がゴワゴワしてきてしまいます。

【 終わった後の筆の洗い方 】

  1. 筆に油を含ませる
  2. 作業板の上で優しく捻ったり、クネクネ(?)させたりする
    (こんな表現でいいんでしょうか?)
  3. ティッシュの上で、ヘラを使って優しく押さえる
  4. 筆の中の漆分がほとんどなくなるまで、<1~3>の作業を繰り返しす
  5. 最後に綺麗な油を筆に軽く含ませてキャップを被せる

※ 極々、ソフトに押さえるようにして筆の中の漆と油を掻き出すようにしてください。強くしごいてしまうと、筆の毛先が痛んで「カール」してしまします。

 

筆は付属のキャップを嵌めて保存します。キャップが無かったらサランラップを丁寧に巻いてください。

キャップがない、もしくはキャップを作りたいという方はこちらを参考にしてください。
 ▸ 筆のキャップの作り方 

 

 

 

インターネット上で初心者相手の金継ぎ教室全ての作業が終わったら作業板を掃除します。

 テレピン(又はエタノール、灯油など)を垂らして、ウエスやティッシュできれいに拭き取ってください。

 

   caution ! 

 厳密に言うと、素地をし終わった後の作業板の上には「ごくごく薄っすら」と漆の成分が残っています。ですので、この作業が終わるまではしっかりとゴム手袋をして、ゴム手袋を外したあとは作業板を含めて漆の道具類を触らないようにした方がいいです。

 

 

 

次の作業工程に進む

欠けた部分錆漆を置く  ▸ ② 錆漆付けまで

 

他の作業工程を見る  ▸ ③ 完成まで

 

 

 

 

 

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