取っ手の壊れた急須の「布着せ」金継ぎ修理04/~布目擦り

 

 

”金継ぎスピリット”とは「モッタイナイ」や「侘び寂び」ではなく、「境界線を超えて他者へ繋がろう」とする想いのこと

 

※ 「取っ手がバラバラに割れてしまった急須」の金継ぎ(金繕い)修理のやり方を説明していきます。本物の漆を使った修理方法ですのでかぶれる可能性があります。ご注意ください。

※ 万が一、漆が肌に付いた場合はすぐに「油(サラダ油など)」でよく洗って下さい。 油?? そうです。「油」をつけ、ゴシゴシ漆を洗い落としてください。その後、その油を石けんや中性洗剤で洗い流してください。

今回は金継ぎ工程の内の〈2回目貼った布のはつり~布目に錆漆さびうるし(ペースト)を擦り込む〉までのやり方を解説していきます。

 

 

前回の作業を見る

▸ Page 03/布貼り二回目まで

 

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  ファイツ!!

 

 

作業を始める前に…

 金継ぎでは「本物の漆」を使うので、直接、漆に触れると「カブレる」可能性が高くなります。「ディフェンシブ」に行きましょう。ゴム手袋は必需品です◎

 

 

 

06 (二回目の)布払い、布目揃え


道具  ①彫刻刀(平丸刀) ②彫刻刀(平刀) ③障子紙用丸刃カッター ④カッターナイフ(大)
▸ 道具と材料の値段/販売店


上記以外で必要な道具… 〇空研ぎペーパー(紙ヤスリです)の#240~320

※ 今回は主に④のカッターナイフの(大)を使いました。持ち手の付け根・内側の布を削るときにはカッター(小)の方が作業がしやすいと思います。

 

布を払う…って何ですか??払う?

はい、払います◎ 端っこの余った布や、はみ出した余計な布端を刃物で削って払い除けます。

 

 

取っ手の壊れた急須の金継ぎ修理の方法

二回目に表側に貼った麻布がしっかりと乾きました。

 

取っ手の壊れた急須の金継ぎ修理の方法

貼った布が「カリッ」と乾いてれば、削り作業ができます。
けど、もし、「ブヨブヨ」している感じ(柔らかい感じ)がしたら、それは麦漆むぎうるし(接着剤)が乾いていない可能性があります。その場合は、乾くまでしっかりと時間を取ってあげてください。(何週間でもお待ちください◎)

 

取っ手の壊れた急須の金継ぎ修理の方法

今回の削りの「メイン」は↑この「重なり」の部分です。一回目に貼った布の上に重ねた部分を処理していきます。

 

取っ手の壊れた急須の金継ぎ修理の方法

「平」の彫刻刀か、もしくはカッターナイフをお使いください。今回はカッターの方が使いやすかったです◎

 

取っ手の壊れた急須の金継ぎ修理の方法

いつも通り、刃物は「横スライド」させて削っていくときれいに削れます。

 

取っ手の壊れた急須の金継ぎ修理の方法

で、「何をどのように削っていくの??」と言いますと…

現在、取っ手の裏側は布が二枚重なっている箇所があるわけです。↑図でいうと、水色線が「一枚目の布」で、赤色線が「二枚目の布」になります。
この「二枚目の布」の端っこをそのままにすると、仕上げた時に「段差」になりやすくなります。ですので、その処理をします。

 

取っ手の壊れた急須の金継ぎ修理の方法

二枚目の布(赤色線)の端っこを薄く削っていきます。斜めに削る…ってことです。
「えっ!布を斜めに薄く削る??…なんて、できっこないよ~(泣)」と思いますよね。でも、意外や、これが簡単にできちゃうんです◎ 布って思った以上に「厚み」があるものなのです。チャレンジしてみてください。きっとできちゃいますよ◎

 

取っ手の壊れた急須の金継ぎ修理の方法カッターナイフでも作業をしてみました。彫刻刀よりもこちらの方が作業しやすかったです。

 

取っ手の壊れた急須の金継ぎ修理の方法

カッターの刃も同様になるべく「横スライド」させていった方が削りやすいです。

「スライドの方向」としては「布が剥がれない方向に力がかかるように」というのを意識してください。
↑の画像で言ったら、カッターは左の方にスライドさせていきます。布の切れ端の「外側に向かって」です。これを「内側に向かって」作業をすると最悪の場合、布が剥がれてしまうことがあります(あまり無いと思いますが)。

 

取っ手の壊れた急須の金継ぎ修理の方法

削りやすいように器の方を動かして(逆さまにしたりして)、作業をします。

 

取っ手の壊れた急須の金継ぎ修理の方法

左手(カッターを持っていない方の手)の親指で、押し出すようにして削っていきます。
右手はどちらかというと力を入れるのではなく、刃の進む方向をコントロールするよう意識してください。

 

布の重なった箇所の削りが終わったら、次に「取っ手」の付け根の布を削っていきます。

取っ手の壊れた急須の金継ぎ修理の方法

こちらも「貼りっ放し」だと布の切れっ端が「段差」になりやすいので、斜めに削ってなだらかに器の素地に繋がるようにします。

 

取っ手の壊れた急須の金継ぎ修理の方法

カッターの刃を手前に引く際には、左手の親指は「ストッパー」の役割をしてもらいます。
ちょっと怖いかもしれませんが、左手で押さえることで「うっかり刃が手前に滑ってくる」のを防ぎます。

 

取っ手の壊れた急須の金継ぎ修理の方法  手前に引く際も、刃はスライドさせます。
刃は「滑らす」ことで「切れ」がよくなります◎

 

取っ手の壊れた急須の金継ぎ修理の方法

「向こう側」に刃を動かす際は、いつものように左手の親指で押します。

 

取っ手の壊れた急須の金継ぎ修理の方法

取っ手の「内側」は削りづらいです(泣)
こちらも「スライドさせる」ようにして削っていきます。

カッターの刃が「小さい」方が内側の削り作業はやりやすいです。

 

取っ手の壊れた急須の金継ぎ修理の方法

できました!こんな具合です◎

 

取っ手の壊れた急須の金継ぎ修理の方法

どでしょう??

 

取っ手の壊れた急須の金継ぎ修理の方法

この作業、そんなに「厳密に」上手くいかなくても全く構いません◎ 強度的に問題が出るようなこともありませんので、眉間にしわを寄せて作業をする必要はありません。どうぞお気楽に◎

 

取っ手の壊れた急須の金継ぎ修理の方法

 

取っ手の壊れた急須の金継ぎ修理の方法

さ、これで次の作業に移りましょう!と行きたいところなのですが、その前に一仕事します。

 

「布目揃え」という作業をします。

取っ手の壊れた急須の金継ぎ修理の方法

簡単です◎ すごく。

「空研ぎペーパー」(紙ヤスリです)の#240~320くらいの粗さのもので、軽く研ぎます。

※ 「水研ぎペーパー(耐水ペーパー)」しか持っていない方は、それでやってもらって大丈夫です◎

 

取っ手の壊れた急須の金継ぎ修理の方法

適当な大きさに切ったペーパーを当てて、布の表面を荒らしてきます。

サラサラ、ちょっとだけ当てていけば結構です。

 

取っ手の壊れた急須の金継ぎ修理の方法

布全体に当てて↑こんな具合になればオッケーです。

 

取っ手の壊れた急須の金継ぎ修理の方法

取っ手の内側も同様に研いでいきます。

 

取っ手の壊れた急須の金継ぎ修理の方法

いろいろな方向に研いでください。

 

取っ手の壊れた急須の金継ぎ修理の方法

この時の注意点としましては「研ぎ過ぎ注意!」ということです。

この作業の「目的」は次の作業(錆漆さびうるし(ペースト)を付ける)の際に錆の「食い付き」が良くなるように…ということです。

ペーパーで布の表面を荒らすことで、錆の食いつきをよくするのです。

ですので、「ペーパー研ぎ」は軽くやるだけで十分です。むしろ「研ぎ過ぎる」と布の繊維が断ち切られて、補強としての強度が落ちます

ご注意ください◎

 

取っ手の壊れた急須の金継ぎ修理の方法

↑こんな感じで大丈夫です。

 

取っ手の壊れた急須の金継ぎ修理の方法

 

取っ手の壊れた急須の金継ぎ修理の方法

うし、研ぎ終わったから、次の作業に行くぜ!…と思ったら、その前にさらにもう一仕事。(漆作業は面倒ですね~)

 

「研ぎっ放し」だと布の表面に「研いだ粉」が付いていて、錆漆の食いつきが悪くなります。ですので、その粉を拭き取ります。

取っ手の壊れた急須の金継ぎ修理の方法

いらない布に水をほんの少し含ませ、湿らせます。

 

取っ手の壊れた急須の金継ぎ修理の方法

↑ほんと、こんなもんです。
「乾拭き」よりも、ほんの少し湿っていた方が粉がよく取れます。

 

取っ手の壊れた急須の金継ぎ修理の方法

コシコシ拭き取ってください。

 

取っ手の壊れた急須の金継ぎ修理の方法

取っ手の内側もです。

 

取っ手の壊れた急須の金継ぎ修理の方法

拭き取り作業終了◎

粉を拭き取ってみると意外と「黒っぽい」ですね。
これでオッケーです。いよいよ次の作業に移ります。

 

 

 

07 布目擦り


道具 ③作業板 ▸作り方  ④付けベラ ▸作り方  ⑤練りベラ ▸作り方 ○マスキングテープ
材料 ①水  ②生漆  ⑥砥の粉
▸ 道具と材料の値段と売っているお店


 

この作業では布の「織った糸同士の隙間」を錆漆さびうるし(ペースト)で埋めていきます。

 

作業を始める前に修理箇所の周りが汚れないように「養生」をします。

取っ手の壊れた急須の金継ぎ修理の方法

マスキングテープを細かく千切って、取っ手の付け根の周りに貼っていきます。

 

取っ手の壊れた急須の金継ぎ修理の方法

個人的にはこの時、布とマスキングテープとの間に1㎜くらいの「隙間」を空けています。
というのも、錆漆を付ける際に錆で布を完全に覆いたいわけです。ということは布の端っこも錆で覆うには、錆は器の「素地」にも付けなくてはならなくなります。(伝わりづらいですか??)

ということで、「隙間」を設けているのです◎

 

取っ手の壊れた急須の金継ぎ修理の方法

この「養生」作業、面倒ですが、地道にやるしかありません。頑張りましょう◎

 

取っ手の壊れた急須の金継ぎ修理の方法

マスキングテープは大体の位置に「ひとまず」貼ってしまって、その後、ヘラや竹串などの硬いモノでずらして微調整していくのも手です◎

 

取っ手の壊れた急須の金継ぎ修理の方法

養生作業が終わりました。

 

取っ手の壊れた急須の金継ぎ修理の方法

↑このくらいできていれば十分です◎

 

続けて、錆漆さびうるし(ペースト)を付ける作業に入ります。

錆漆を作ります。

 

体積比(目分量)… 砥の粉 10 : 8 生漆  ※ 水は適量

  1. 砥の粉を潰す
  2. 水を少量ずつ足しつつ、練る。
    チューブ入りの練りからし」くらいの状態になるまで水を加えつつ練る
  3. 次に「漆」を少しずつ足しつつ、練る
  4. 完成

▸ 詳しい錆漆の作り方ページ

 

※ 錆漆の「作り置き」はおススメしません。「使うときに作る」が原則です。作ってから1~2日くらは乾きますが、どんどん乾きが悪くなっていきます。

とはいえ、「明日も他の器を直すので」という方は、残った錆漆さびうるし(ペースト)を保存してください◎
 ▸ 余った錆漆・麦漆・漆の保存方法

 

錆をつけていくための「ヘラ」ですが、今回は…

取っ手の壊れた急須の金継ぎ修理の方法

ヘラの先っちょに「角度がついている」ヘラを用意してください。

なぜならば…

 

取っ手の壊れた急須の金継ぎ修理の方法

取っ手の「内側」に錆を付ける際に、角度がついていないと届かないからです。

「えー、そんなヘラ、持ってないよー(泣)」という方、お手持ちのヘラの先をペーパーで少し研いで鋭角にすれば大丈夫です◎
もしくは作るの簡単ですので、ヘラを何本か自作してみてください。愉しいですよ。

 

更に…もう一本、特殊なヘラがあると作業が楽になります。

取っ手の壊れた急須の金継ぎ修理の方法

ヘラの先っちょが「丸くカーブ」しているヘラです。

取っ手の付け根のカーブよりも「少しきつめのカーブ」のヘラを使うと、その部分に錆漆が付けやすくなります。

 

それではいよいよ錆付けの実践です◎

取っ手の壊れた急須の金継ぎ修理の方法

まずは作業板の上にある錆漆さびうるし(ペースト)をヘラの先で少量取ります。

 

  1. 作業板の上で錆漆さびうるし(ペースト)を薄く均一に広げる。
  2. ヘラを少し寝かしつつ、横から滑り込ませる。
  3. 右側から左側へ通す。
  4. そうするとヘラの先っちょだけに錆漆がつきます。

 

 

取っ手の壊れた急須の金継ぎ修理の方法

織っている糸と糸の隙間に錆を擦り込んでいきます。ですので、この作業は難しくありません。ひたすら擦り込んでいってください◎

 

取っ手の壊れた急須の金継ぎ修理の方法

付けた錆を広げていきます。広げるというか隙間に押し込んでいく感じです。

 

取っ手の壊れた急須の金継ぎ修理の方法

ヘラを動かす方向が一方向だけだと、ほんの僅かな隙間ができやすくなってしまいます。
いろいろな方向にヘラを動かしていってください。

 

取っ手の壊れた急須の金継ぎ修理の方法

取っ手の付け根は「先が丸くカーブしたヘラ」を使います。

 

取っ手の壊れた急須の金継ぎ修理の方法

地道に地道にヘラを通して錆を擦り込んでいきます。

 

取っ手の壊れた急須の金継ぎ修理の方法

取っ手内側の作業でヘラを横に通す場合は「先丸ベラ」を使います。

 

取っ手の壊れた急須の金継ぎ修理の方法

取っ手内側の作業が終わりました◎

 

続いて、外側です。

取っ手の壊れた急須の金継ぎ修理の方法

少量ずつヘラで錆を掬って、布目に擦り込んでいきます。

「内側作業」よりも「外側作業」の方が楽です◎

 

取っ手の壊れた急須の金継ぎ修理の方法

取っ手のカーブに合わせてヘラも動かしていきます。

 

取っ手の壊れた急須の金継ぎ修理の方法

縦横斜め…なるべく多方向からヘラを通します。

 

取っ手の「両端部分」とか「側面」は錆付けがやりづらいかと思います。(そんなことないかな??)

取っ手の壊れた急須の金継ぎ修理の方法

そういった場所の作業のやり方です。

まずは作業板の上から少量の錆を掬ってきます。

 

取っ手の壊れた急須の金継ぎ修理の方法

取っ手の端っこのエッジに擦りつけるようにヘラを通していきます。

 

取っ手の壊れた急須の金継ぎ修理の方法

斜め向こう側にヘラを通しつつ、ヘラに付いた錆を取っ手のエッジで切っていきます。

 

取っ手の壊れた急須の金継ぎ修理の方法

錆が足りなくなったら補充して、同じ動作を繰り返します。

 

取っ手の壊れた急須の金継ぎ修理の方法

取っ手のエッジに錆が乗りました◎

 

取っ手の壊れた急須の金継ぎ修理の方法

今度はその錆を広げていきます。

 

取っ手の壊れた急須の金継ぎ修理の方法

布目に擦り込んでいきます。

 

取っ手の壊れた急須の金継ぎ修理の方法

「取っ手のエッジで錆を切る」…というテクニックが使えると作業が楽に早くできます◎ チャレンジしてみてください。

 

取っ手の壊れた急須の金継ぎ修理の方法

地道に「擦り込み」作業を繰り返して、ようやく終わりました。

 

取っ手の壊れた急須の金継ぎ修理の方法

今回の作業では錆を厚く付けないようにしてください。あくまでも「布目に擦り込」んで布目を埋める…という作業です。

だけど、少しくらいでしたら厚く錆を付けちゃった部分とか、錆がガビガビと「バリ」のような感じで残ってしまった個所があっても気にせずに行きましょう◎

乾いた後、しっかりと研げば大丈夫です◎

 

取っ手の壊れた急須の金継ぎ修理の方法

はい、できました。

 

 

 錆漆さびうるし(ペースト)はそれ自体に「水分」が入っているので、とくに湿度のある「漆風呂」に入れなくてもしっかりと硬化してくれます。

けど、古い生漆や乾きの悪い生漆を使っていたり、数日、取り置きしておいた錆を使った場合は乾きが悪いかもしれません。その場合は漆風呂に入れて、湿度を与えてください。(湿度65%~)

 

※ 水を固く絞った布を中に入れて湿度を高くしてください。

もうちょい詳しく見たい方は↓こちらへ

▸ 段ボール漆風呂の作り方

 

 

 

 【 お掃除、お掃除 】

インターネット上で初心者相手の金継ぎ教室全ての作業が終わったら作業板を掃除します。

 テレピン(又はエタノール、灯油など)を垂らして、ウエスやティッシュできれいに拭き取ってください。

   caution ! 

厳密に言うと、素地をし終わった後の作業板の上には「ごくごく薄っすら」と漆の成分が残っています。ですので、この作業が終わるまではしっかりとゴム手袋をして、ゴム手袋を外したあとは作業板を含めて漆の道具類を触らないようにした方がいいです。

 

 

 

 

 

 

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金継ぎのやり方

 

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