割れた蕎麦猪口/本漆金繕いの修理工程を詳しく解説します Page 01

割れた器の金繕いの方法

※ 口元が割れた蕎麦猪口の金繕い修理のやり方を説明していきます。本物の漆を使った修理方法ですので「かぶれる」可能性があります。ご注意ください。

今回は金繕い工程の内の〈素地の調整~麦漆接着〉までの方法を解説していきます。

 

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金繕い・金継ぎとは


金繕い・金継ぎとは欠けたり、割れたりした器を漆で直す日本の伝統技法です。漆で接着し、漆で欠けや穴を埋め、漆を塗って、最後に金粉や銀粉を蒔いてお化粧をします。

 

 

器 information


  • 器: 明治時代(?)の蕎麦猪口
  • 器の特徴: 磁器の絵付け、ややピカピカの釉薬
  • 器のサイズ: 直径77㎜、高さ63㎜
  • 破損状態: 口元 割れ2ピース+本体 (割れの長さ 総計約850㎜)

 

 

 

口元の割れた蕎麦猪口

よくある割れ具合です。

 磁器は磁器でも現代作られている(特にメーカーもの)ようなカチカチピカピカの磁器ではないので、素地が少し柔らかそうです。この方が漆の食いつきがよいと思います。

 

口元の割れた蕎麦猪口を金継ぎで直す

 よく見て、ひびが入っていないかチェックします。割れた時のひびが入ることがよくありますが、見えづらいので注意してください。

今回はひびはなさそうです。

 

口元の割れた蕎麦猪口の破片

破片が2ピースです。

 

 

 

 

〈金繕いの工程 01〉 鑢で器の素地を研ぐ


金継ぎの素地調整工程で使う道具の画像

今回の素地調整で使う道具: 

②砲弾型のリューターのダイヤモンドビット (ホームセンター等で入手可能/価格 \200~)

▸ ダイヤモンドビットのカスタマイズの方法

 

 

 器の割れた断面のエッジをダイヤモンドビットで研いでいく

壊れた器のエッジを研いでいきます。
軽くさらさらと研ぐだけで大丈夫です。

 

器の割れた断面のエッジをダイヤモンドビットで研いでいく

尖がった部分は少し入念に研ぎます。ちょい「削る」感覚で、少し丸くなるまで研ぎます。

 

器の割れた断面のエッジをダイヤモンドビットで研いでいく

 器の小さく割れたピースも同様に研ぎます。
尖がりは入念に。

 

 

 

〈金繕いの工程 02〉 漆で器の素地を固める


金継ぎの素地固め工程で使う道具の画像

素地固めで使う道具と材料(▸ 素地固めで使う道具・材料の入手先・値段

  • 道具: ⑥ 小筆 ⑤ 付け箆 
  • 材料: ⑦ 生漆 ① テレピン ② サラダ油 ② ティッシュペーパー ③ 作業板(クリアファイル)

 

まずは使う前に筆をテレピンで洗って油を洗い出します。 ▸ 詳しい筆の洗い方

毎回、作業が終わったときに筆を”油”で洗いっているので、使うときにはまず筆の中の油を取り除きます。

  1. 作業板の上に数滴テレピンを垂らす。
  2. その上で筆を捻ったりしてテレピンをよく含ませる。
  3. ティッシュペーパーの上でヘラで筆を優しくしごく。

 

 

続いて漆を用意します。
ひびに浸み込んでいきやすくするために生漆にテレピンを混ぜて希釈してください。
作業板の上でヘラを使ってよく混ぜ合わせます。

生漆 10 : 3 テレピン
くらいの割合で生漆を希釈します。

 

器の割れた断面に漆を塗っていく

磁器で出来た器なので漆がほとんど浸み込みませんが、一応、漆の「固め」作業を行います。
素地固めをやらない職人さんもいますし、私もやらない時があります。「固め」はやったらダメ!という職人さんもいます。

今回はやらなくてもよいケースだったかと思います。

 

器の割れた断面に漆を塗っていく

器の割れた断面に漆を塗布していきます。

 

器の割れた断面に漆を塗っていく

器の本体の断面にも漆を浸み込ませていきます。

 

器の割れた断面に漆を塗っていく

 

 

器の割れた断面に漆を塗っていく

全ての割れた断面に漆の塗布をし終わったら、今度は表面に残った漆をティッシュで吸い取ります。

ティッシュを何回か折り畳みます。それを器の割れた断面に押し当てます。

 

器の割れた断面に漆を塗っていく

余分な漆をティッシュが吸い取ってくれます。
ティッシュの吸い取り面を変えて、漆がある程度つかなくなるまで繰り返します。

 

器の割れた断面に漆を塗っていく

 小さく割れたピースの方も漆の拭き取を行います。

割れたピースは持ち運びやすいように板の上に乗せておきました。

 

ティッシュでの拭き取が終わったら2,3時間~半日程度、湿した場所(湿度65%~)に置いて、漆が乾き始めるのを待ちます。

 

 

作業が終わったら油で筆を洗います。 ▸ 詳しい筆の洗い方

筆は付属のキャップを嵌めて保存します。キャップが無かったらサランラップを丁寧に巻いてください。
キャップがない、もしくはキャップを作りたいという方向けに ▸ 筆のキャップの作り方 ページを作りましたので、ご覧ください。

 

 

 

〈金繕いの工程 03〉 割れたピースを麦漆で接着


麦漆で使う道具と材料

 金継ぎの麦漆接着で使う道具と材料

漆を使って接着剤を作ります。 ▸ 麦漆の詳しい作り方

金継ぎ工程の麦漆を塗布する前にあらかじめどのパーツがどの部分に来るか確認しておきます。

 

 麦漆の扱い方です。

① 作業板の上に麦漆を用意する
② ヘラで麦漆を均一に薄く伸ばす。
③ 伸ばした麦漆の右側にヘラをスタンバイする(ヘラは少し寝かせる)。
④ ヘラを左側にスライドさせる。
⑤ ヘラの先っちょに麦漆が少しつく。

 

 

 器の割れた断面に麦漆を塗っていく

箆先に少量の麦漆をとります。

 

器の割れた断面に麦漆を塗っていく

まずは割れた器の断面に麦漆を置いていきます。

 

器の割れた断面に麦漆を塗っていく

ヘラを横にスライドさせます。

 

器の割れた断面に麦漆を塗っていく

ツツツと麦漆が付いていきます。

 

器の割れた断面に麦漆を塗っていく

次に断面ラインに対して直角方向にヘラを小刻みに通していきます。
麦漆を全体に満遍なく広げていく感じです。

 

器の割れた断面に麦漆を塗っていく

断面ラインに沿ってヘラを通して、麦漆の厚みがなるべく一定になるようにします。

 

器の割れた断面に麦漆を塗っていく

おまけでヘラを返します。

 

器の割れた断面に麦漆を塗っていく

麦漆はなるべく薄く、均一になるようにしてください。

麦漆が厚いほど、接着した時に「異物」が挟まっているということになりますので「ずれ」も大きくなります。

 

器の割れた断面に麦漆を塗っていく

こんな感じでどうでしょう?

 

器の割れた断面に麦漆を塗っていく

麦漆の乾き具合をチェックするためにいらない紙やハガキなどに麦漆を薄く付けておきます。
作業始めと、終わりに付けておくといいかと思います。

木っ端微塵系の割れた器を直す場合、麦漆の塗布だけで1時間以上かかる場合があります。
作業の始めと終わりとでは麦漆の乾き具合に差がでます。

その場合、どうしましょうか?いや、真剣に考えたことがありませんでした(苦笑)
何となくで帳尻を合わせてきたような…、特に考えなくても問題なかったような…。

とりあえず始めに付けた麦漆が乾きすぎないうちに接着作業に入った方がいいと思います。
(おっ!強引に話を終わらせたな! いやー、今後きちんと検討してみます)

 

器の割れた断面に麦漆を塗っていく

麦漆が乾き始めるのを待ちます。
麦漆の表面が乾いてきて、少しマットになってきます。
40~90分といったところでしょうか。(かなり時間の幅がありますね。これじゃ、参考にならないかな)

「乾き始めていない」状態で接着しても大丈夫なのですが、「乾き始め」のちょうどよいタイミングでくっつけると、接着作業がやりやすいですし、その後の麦漆の乾きも明らかに早いです。

ですが、ちょっと不安なのね、という方は少し早めに接着作業を行ってください。

 

 

金繕いの麦漆接着作業

接着作業に入ります。

 

金繕いの麦漆接着作業

破片をしっかりと押し込んで、密着させてください。

 

金繕いの麦漆接着作業

 すべてのピースを嵌めたら、さらにしっかりと押し込みます。

片方を押し込んだら、もう片方が少しズレて…という具合になりますので、全体のバランスをみながら「程よい」感じになるようにします。

ほんの少しのズレは「壊れた記憶」として受け入れてあげる度量を持つのがよろしいかと思います。

 

金繕いの麦漆接着作業

 自重で接着面に「圧力」がかかるようなポジション取りをします。(なるべく。無理な場合もありますが)

今回は器を少し斜めにしています。この状態で安定するように固定します。
(↑画像より、もう2つくらい「支え」を増やして、器の左右に置いて挟み込み、固定するのがいいと思います)

 この後は麦漆が乾くのを待ちます。
通常ですと3~4週間
乾きかけのグッドタイミングで接着できた場合は1~2週間でしっかりと硬化します。

 

 

 

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