4/5 割れた7寸平皿の金継ぎ修理~漆を塗るまで

本漆金継ぎ

 ファイツ!!

 

2020.5 全面リニューアル済み

 

7寸の平皿

超・初心者向け

難易度1.0
充填材刻苧(パテ)+錆漆(ペースト)
使用粉錫粉(銀色の金属粉)
こだわり度簡単・お手軽
今回のシリーズはあまり「完成度の高さ」にこだわらずに、「そこそこ」に仕上げます◎

 

 

〈縁が割れた7寸の平皿〉の「伝統的な本当の金継ぎ修理のやり方を説明していきます。

このページでは金継ぎの工程のうち
〈錆漆を削る~漆を塗るまで
のやり方を解説していきます。

 

 

 

 

金継ぎ修理を始めるその前に…

 

 
【ご注意!】


本物の漆
を使った修理方法ですのでかぶれる」可能性があります。

 

※ 万が一、漆が肌に付いた場合はすぐに「油(サラダ油など)」でよく洗って下さい

油?? そうです。「油」をつけ、ゴシゴシ漆を洗い落としてください。その後、その油を石けんや中性洗剤で洗い流してください。
※ もし、かぶれてしまい、それがひどくなるようでしたら、医者に行って処方してもらってください。

 

 

【道具・材料と購入先を見る】↓

▸本漆金継ぎで使う道具・材料ページ

 

 

作業を始めるにあたって、まずは装備を…

←:使い捨てゴム手袋 / アームカバー:→

金継ぎでは本漆を使うので「ディフェンシブ」に行きましょう。
ゴム手袋は必需品です◎ 漆をなめちゃいけません◎

作業後、油分多めのクリームを手、腕など、肌が露出していたところ(夏場は脚・足にも)に塗っておくと、カブレにくかった…というコメントをいただきました。
(塗り忘れたときは、毎回、痒くなった…そうです)

気になる方はやってみてください◎

注意:
修理箇所に油分をつけてしまうと、その箇所だけ漆が乾かなくなります。(手脂でも乾かなくなります)
ご注意ください!
※ 修理箇所に油分が付いてしまった場合は、エタノールで入念に拭きあげるか、台所用中性洗剤で洗えば大丈夫です◎

 

 

 

 

錆漆が乾かなかった場合

 

万が一ですが…

・こんな感じ↑に錆漆の表面が「シワシワ」になった場合
・3日経って、「表面は乾いているようなんだけど、爪で押すとちょっと柔らかい感じがする…」といった場合

基本的には錆漆を除去して、やり直した方がいいです。

 

こちらのページを参考にしてください↓

 

 

 

 

【錆漆を削る】

 

 

作業の目的

盛り過ぎた箇所を削り、器に沿った形に成形していきます。
それと同時に修理箇所周辺についてしまった錆漆を削り落とします。

 

刃物で削った後に「耐水ペーパー/駿河炭」などで研ぐのですが、刃物でどこまできれいに削れているかで「研ぎ作業」に掛かる時間がかなり変わってきます。

最終的な仕上がり具合も「刃物での削り」が大きく影響します。

 

 

削り」と「研ぎ」
の違い
▪▪▪

「刃物での削り」の特徴


「大きな面」を作ることができる
・一気に錆漆の「量」を落とせる
(錆漆の体積を減らすのに「研ぎ」よりも効率が良い)
・ただし、「角」は残る

  

少し広い範囲の形状を成形していくのに優れている

「ペーパー/駿河炭での研ぎ」の特徴


・小さな形の修正
角を取って滑らかにすることができる
・基本的に大きな形、面は作れない

  

小さい範囲を滑らかにする(ヌルッとさせる)のに優れている

▪▪▪

例えば欠けた箇所に錆漆を付けていくとします↓

↑かなり大袈裟な「凸凹」になっちゃいましたが、これを刃物で削ります。

 

 

㊧:刃物での削りがあまり上手くいかず、削った錆漆の形状がガタガタした状態だった場合
→「この後、ペーパーで研ぐから、それできれいな平滑面にすればいいや◎」と思ったとしても、、、

㊨:ペーパーで研いだとしても、「出っ張っている箇所」や「角」を滑らかに、ヌルッとさせることはできるのですが、「全体の形(大きな形)」の修正は難しく、凸凹のままそれが滑らかになる…という感じになります。

 

㊧:刃物でしっかりと「大きな形」としてきれいに削り、、

㊨:残った角をペーパーで研ぐと、小さな凸凹はなく、全体的に滑らかな形状に仕上げることができます。

 

 

 

 

錆漆が乾いたか?の確認

錆漆は通常1日でしっかりと乾きます


(条件がいいと5、6時間で削れる硬度になります)

 

「時間」以外で乾きのチェックをするやり方ですが、こんな感じ↓で判断することができます。

 

【乾いた】

「カリカリ」している。焼けた食パンみたいに。
・棒で押す→凹まない、硬い
引っ掻く→白い線が残る

【乾いていない】

「しっとり」している
・引っ掻く→白い線が残らない
・棒で押す→なんだか「弾力」を感じる
(↑この状態は全然、乾いていません!)

 

「錆漆が乾いたかどうかのチェック」の参考になりそうな動画です↓

(6:35~7:00まで再生)

しっかりと乾いている場合、「カリカリ」っとして、爪や棒で引っ掻くと引っ掻いた場所が「白く」線が残ります。それから強く押しても「弾力」を感じません。

※ 万が一、錆漆が乾いていない場合は…
・湿度をかなり高めにした場所に置いて1週間程待つ
・錆漆を取り除いて、やり直す
…上記のいずれかを選択してください。

※ 1週間待ってもあまり硬化していなかった場合は、錆漆を除去してやり直す。
※ 2~3日経っても乾かなかった錆漆は乾くのにすごく時間がかかります。
しばらく待っても、乾かない場合もあります。さらには乾いても「強度が極端に低い」場合もあります。
「やり直し」た方が断然、効率的だし、強度的にも安心できます。基本的にはやり直しをおススメします

 

やり直す場合はこちらのページ↓を参考にしてください。

 

 

 

〈使う道具/材料〉

 

 道具: 下記の道具のいずれか、もしくは複数が用意できると作業がしやすくなります。
平丸〉の彫刻刀
〈平〉の彫刻刀
カーブ刃〉のカッター
普通のカッター(大)


※ その他、本漆金継ぎで使うおススメの道具・材料の一覧(購入先も)を↓こちらのページにまとめました。
▸ 本漆金継ぎで使う道具・材料ページ

 

ベストな組み合わせは「①〈平丸〉の彫刻刀+②〈平〉の彫刻刀」です。
が、彫刻刀は砥石で研ぐ必要があります。←これって普通の人には厳しいですよね?

ということで、ベストではありませんが「落しどころ」として…
初心者さんには「③〈カーブ刃〉のカッター+④ 普通のカッター(大)」をおススメしています。

 

 

 

▪実作業▪

 

● 違う器ですが「錆漆削り」の参考になる動画です↓


(0:37~6:50まで再生)

 

(3:55~7:09まで再生)

 

それでは錆漆を削っていきます。

彫刻刀を矢印の方向に動かして錆漆を少しずつ削っていく

盛り過ぎた錆漆、周りに付いてしまった錆漆を刃物で削っていきます。

マスキングをしなかったので(←判断ミス!)、周りに付いた錆漆がなかなか取れません…(T_T)

 

 

 

 

錆漆の削り方
▪▪▪

㊨:盛った錆漆の上面が「器のツライチ(フラット)」になるように削っていきます。

 

削る時は刃物の刃を「ビタリ」と器に当てながら削ってください。

器に彫刻刀やカッターの刃を当てると
器が傷ついたり
削れちゃったりするんじゃないの?!

ノンノン!
 
器の方が刃物よりも硬いので
器には傷が入りません
 
怖がらなくて大丈夫ですよ~◎

 

 

割れた破片がズレて接着された箇所の錆漆の処理は…

錆漆を斜めに削るのですが、「どこからどこまで削ればいいの?」というと…
㊨:原則的には割れた破片の「面取りしたエッジからエッジまで」(赤い矢印)と考えてください。

 

 

なるべく「段差をなだらかにしよう」として上図↑のように「斜めに錆漆を削る」と、〈赤斜線部分〉の錆漆は釉薬の上(器の表面)に直接付いている部分となります。

釉薬の上はどうしても錆漆の「食いつき」が弱くなりがちなので、なるべく避けた方がいいです。

これが現在の金継ぎ図書館の方針です◎

 

 

 

お皿の縁部分の錆漆を彫刻刀で削っていく

お皿のフチの部分です。
ここに付けた錆漆の処理は少々手こずります。

 

彫刻刀を矢印の方にスライドさせて縁の錆漆を削る

削り過ぎないように慎重に作業していきます。

 

器の縁の錆漆を削り終わった

削り終わりました。

 

 

お皿の裏側も同様に錆漆を削っていきます

器の裏側の錆漆も彫刻刀で削っていく

「周りに付いた錆漆」ですが、この時点で「完璧」に取れなくても大丈夫です。
この後の「錆研ぎ」や「漆研ぎ」の時に一緒に研いでしまえばきれいになります。

けど、できればこの「削り作業」でなるべくきれいにしておいてください。

 

 

削った錆漆の削りかすをウエスできれいに拭き取る

錆漆の削りかすをウエスで拭き取ります。

 

 

【錆漆を研ぐ】

彫刻刀で削ってきれいなラインが出たら、続いて耐水ペーパーなどで水研ぎします。

 

 

〈使う道具/材料〉

 道具:
ウエススポンジの方が使いやすい
④ 要らなくなったハサミ
小さな水入れ
水桶(もあった方がベター)

材料:
水差し
耐水ペーパー(使うペーパーの番手は下で説明します)
→実は駿河炭が断然おススメ


※ その他、本漆金継ぎで使うおススメの道具・材料の一覧(購入先も)を↓こちらのページにまとめました。
▸ 本漆金継ぎで使う道具・材料ページ

 

※ 「要らなくなったハサミ」は耐水ペーパーを切るのに使います。
ペーパーを切るとハサミが「ばか」になって他のものが切れなくなります
要らなくなったものか、100均などで買った安いものを使ってください◎

 

 

 ● 使う耐水ペーパーの番手(荒さ)について 

耐水ペーパーっていろいろな番手(荒さ)がありますが、どの状況で何番くらいを使うのが適しているのか??…ちょっとわかりませんよね。

↓このくらいを一応の基準と考えてください。

 

錆漆は
何番のペーパーで研ぐ?

▪▪▪

 削り作業できれいに成形できている場合、#320~400程度で研いでください。

 先ほどの「削り作業」で、あまりきれいに削れていない(まだまだ凸凹している)場合
 ↓
まずは耐水ペーパーの#240~320くらい(←粗目)を使って研いでください。
粗い方がどんどん研げますので、効率がいいです。
粗いペーパーで「きれいな曲面の形」を作ります
 ↓
滑らかな形ができましたら、仕上げに#320~400程度で軽く研いで、
表面の肌のキメを細かく整えてください。

 

 

 

 ● 耐水ペーパーの仕立て方 

ちょっと面倒ですが、研ぎ面をよりきれいな形に仕上げるためと、修理箇所以外を傷付けないために、ペーパーにひと手間加えます。

 

 

耐水ペーパー
の使い方
▪▪▪

耐水ペーパーを小さく切って使います。

切れ味の落ちたハサミで、耐水ペーパーを1×1㎝くらいに小さく切ります

それを三つ折りにします。
(↑ペーパーを三層構造の「硬い」板にして使います)

ペーパーは少量の水をつけながら研ぎ作業をおこないます。

 

なんでこんなに「小っちゃくして」使うの??しかも「三つ折り」って、、どういうこと?かと言いますと…
 
理由は2つです。
1.研ぐ面積を極力少なくするため
2.平面保持強度を高めるため
 
【1の理由】
「耐水ペーパー」って研磨力がとても強いので、器の釉薬(表面)を傷つけてしまうのです。
研いだ後、修理箇所周辺の釉薬が薄っすらと曇っているのは、あれは「細かい傷」が付いたからなのです。
 
なので、「なるべく」ですが、周りの釉薬が傷つかないようにペーパーを小さくして使いたいわけです◎
 
【2の理由】
「三つ折り」するというのは、ペーパーの「平面保持強度」を高くするためです。
なるべく「研ぐ方の道具」の平面を維持したいわけです。
 
ペーパー1枚で研いでいると「へなへな」してしまいます。紙なので柔らかいですよね。
 
それを使って研いでいると↓この「Aコース」のような仕上がりになります。

↑ペーパー1枚で研いでいると「Aコース」になるわけです。
 
紙一枚だと「研ぐ方の道具」が柔らかいので、「研がれる方のもの=錆漆(←硬いもの)」の形に沿ってしまい、その形通りに研いでしまいます。
錆漆の「山の角の部分(エッジ)」は軽くさらうことはできるのですが、「綺麗な曲面に形作る」ことは難しくなります。

一方、「Bコース」のペーパー3枚重ね(三つ折り)だと、「研ぐ方の道具」の「硬さ」が3倍になるわけです。
「研がれる方のもの=錆漆」の形に引っ張られず、研ぎによって錆漆の形を作っていくことが可能になります。
 
※ ペーパー1枚に比べて…という話です。
平面維持強度をもっと上げて、「きれいにな形を作る」作業がしたかったら
「漆研ぎ用の“駿河炭”」が断然おススメです。

 

 

 ● 駿河炭の仕立て方 

「研ぎ道具」としては、実は「駿河炭」が最強のアイテムです◎

何といっても、耐水ペーパーと違って器に傷が入らない
できれば使ってみていただきたいです!
‣駿河炭が断然おススメな理由

 

 

 

駿河炭
の仕立て方
▪▪▪

炭は大きな塊で売っているので、自分で小さく切って使います。

① まずはカナノコ(金鋸)の刃で厚さ15~20㎜程度輪切りにします。

② 次に薄い板状になった炭の塊りを、大き目のカッターナイフで「割っていきます」

③ さらにカッターで割って、大小さまざまな面積のものを用意します。

 

使う際は炭の「研ぎ面」を砥石(または耐水ペーパー)の上で研いで、平面にします。

少量の水を付けながら修理箇所を研いでいきます。

修理箇所を研いでいると炭の研ぎ面が崩れてきますので、ちょこちょこと砥石(またはペーパー)に当てて、研ぎ面を修正します。

 

 

詳しくはこちらのページをご覧ください↓

 

 

 

 

▪実作業▪

 

● 違う器ですが、「錆漆研ぎ」の参考になりそうな動画です↓

6:50~11:21まで再生

 


 
7:09~9:01まで再生

 

 

前の作業で、刃物できれいに成形したのに
何でわざわざペーパーで研がなくちゃならないの??
 
この作業、抜かしちゃっても大丈夫?

そうですね~。。
「軽くでもいい」のでやっておいた方がいいと思います◎

 

欠けたお茶碗の金継ぎ修理のやり方
図 ①
「刃物で削っただけ」というのは、実は無数に小さい「角」が立っている状態なんです。
精密に見ると「面が繋がっていない」のです。
ちょっとカクカクしている。

図 ②③ 
それをペーパーで研ぐと、角が丸まって、面が繋がり、きれいな平滑面ができるわけです◎

 

 

今回は、#320~400程度の耐水ペーパーで研いでいきます。

 

彫刻刀で削っても残った錆漆を耐水ペーパーを使って研いでいく

少量の水を付けつつ、研いでいきます。

 

錆漆をペーパーで研ぐ。前後左右にペーパーを動かして研いでいく

耐水ペーパーは器よりも「硬い」ので、器の方に「薄っすら」と傷が入ってしまいます(なぬ!)
なるべく必要最小限に研ぐように注意します。

※「駿河炭」で研ぐと器に傷が入りません。スゴイ!

 

ペーパーで研いでも、少し錆漆が残る場合がある

ペーパーで研いだのですが、器の表面が「ガサガサ」しているので、そこに錆漆が入り込んでしまいました…(T_T)

マスキングをやっていればこんなことにはならんかったのに…

 

 

もしもの時の「激落ち」くん


どんな場合でも有効であるとは限りませんが、「メラミンスポンジ」で擦ると細かい溝に残った錆漆が取れる場合が多いです。

 

わずかに残った錆漆を激落ちくんで研いでいく

ちょっとだけ水を付けたメラニンスポンジで周りのこびりついた錆漆を擦っていきます。

 

激落ち君をちぎって小さくして、それを水につけて研いでいく

地道に、結構、頑張らないとなかなか錆漆は取れません…。

やっぱり「この器は錆漆が付くとヤバいかも…」と怪しい感じの時は、ひとまず「マスキング」ですね◎

 

激落ち君で頑固な錆漆を除去して器がきれいになった

激落ちくんのお陰で、ゲキ落ちしてきれいになりました。

 

続いて器の裏側の頑固な錆漆も落としていきます。

お皿の裏側も激落ち君を使って頑固な錆漆を落としていく

少量の水を付けつつ頑張って擦り続けます。

 

激落ち君を小さくちぎって水につけてそれで研いでいく

ゲキ落ちていきます。

 

錆漆を激落ちくんで研いで器の裏側もきれいになった

はい、きれいになりました。よかった◎

 

 

注意!

周りに付いてしまった錆漆の汚れが落ちたということは、接着箇所の隙間にせっかく詰めた錆漆も少し削れてたということです。

ですので、メラミンスポンジで錆漆の汚れを取る場合には「1回目の漆塗り後」にやった方がよろしいです。

漆の塗膜の場合、メラミンスポンジで擦ってもほとんど擦り減りません◎

 

 

 

錆漆を研いでみて「凹み」が見つかった場合


・「最終的な仕上げ」をきれいにしたい場合は、面倒ですが、「もう一度、錆漆付け」することをおススメします。
・「金継ぎ作業に疲れてしまった…」という方や、「そこまでの仕上げの綺麗さは求めないので、なるべく早く仕上げたい!」という方は、次の「漆塗り」の工程に進んでください◎

私の場合、必ず錆付けは2回やります

 

もう一度、錆付けをやり場合は前回の作業ページをご覧ください↓

 

 

 

 

【捨て塗り(漆塗り1回目)】

錆漆を研いで、平滑な面が作れたら、錆漆の上に漆を塗っていきます。

 

 

作業の目的

 

「錆漆を研いだ段階」では、実はまだ「薄っすらと凹んだ箇所」や「ピンホール」などが残っている場合が多いのです。

「捨て塗り(漆塗り1回目)」の主な目的は、その凹みやピンホールを見つけるため(可視化するため)と、金継ぎ図書館では考えています。

 

〈使う道具/材料〉

 道具:
② ティッシュぺーパー
④ 蒔絵筆またはインターロン筆 
 練りベラ ‣作り方ページ ‣作り方の動画
作業盤(ガラス板など)
‣作り方ページ ‣作り方の動画
 ゲル板 ○ サランラップ

材料:
アルコールテレピン、灯油など)
⑤ 精製漆(今回は”呂色漆”…黒い色の漆)
サラダ油


※ その他、本漆金継ぎで使うおススメの道具・材料の一覧(購入先も)を↓こちらのページにまとめました。
▸ 本漆金継ぎで使う道具・材料ページ

 

 

 「生漆」しか持っていないのですが、どうしたらいいですか?
はい、それではこちらへどうぞ ↓

▸ 精製漆の作り方

 

↑ この茶色半透明の漆でも「漆塗り」はできるのですが、半透明だと「どこを塗ったのかわかりにくい」のです(涙)漆に色を付けたい方はこちらへ ↓

▸ 色漆の作り方

 

 

 

使用「前」の筆の洗い方

 

 

【ご注意!】
 
今回はテレピンで筆を洗いますが、これはアクリルの筆など「安価な筆」を洗う場合の話です。

蒔絵筆(高級な筆)の場合は「」で洗ってください。毛が痛みづらくなります。
‣ 蒔絵筆の洗い方の動画

 

 まずは筆をテレピン(または灯油)で洗って筆の中の「油」を洗い出します。
▸ 詳しい作業前の筆の洗い方

どうして筆に「油」が付いてるの??…かといいますと、漆作業で使った筆は最後に油で洗っているからなのです。油で洗うと筆の中に残った微量な漆が乾きません。
漆と油とは相性が悪いのですが、それを利用して、保管するときには油で洗います。

逆に、使う時にはその油を除去します。

 

使う道具/材料

テレピン
・ティッシュペーパー


 

 

 作業工程 
① 畳んだティッシュに筆を包む
② ティッシュをギュッと摘まんで、筆の中の油を吸い取る
③ 作業板の上に数滴テレピンを垂らす
④ その上で筆を捻ったりしてテレピンをよく含ませる
⑤ 筆をティッシュで包む
⑥ ティッシュをぎゅっと押えて、「油+テレピン」を絞り出す
⑦ 「4→5→6」を2~3回繰り返す

① 折り畳んだティッシュに筆を包みます。
② ティッシュの上に筆を置きます。

 
③ ティッシュの上からギュッと摘まんで、筆の中の油を吸い取ります。
④ これを3,4回繰り返して、しっかりと油を搾り取ります

⑤ 作業盤の上にテレピンを数滴、垂らします。
⑥ 筆にテレピンを含ませます。
筆は作業盤の上で捻ったりして、しっかりとテレピンと馴染むようにします。

⑦ ティッシュの上に筆を乗せます。
⑧ ティッシュの上からギュッと摘まんで、「油+テレピン」を絞り出します。

この後、「⑥→⑦→⑧」を2~3回、繰り返します。

この作業で筆のなかの油分をしっかりと除去します。
筆の中に油が残っていると漆が乾かないことがありますのでご注意ください。

 

 

 
【ご注意!】

「エタノール」などの揮発性の強いもので洗うと、テレピンよりも油分がしっかりと除去できますが、その分、筆への負担も大きくなり、傷みやすくなります。

ですので、金継ぎ図書館では筆が傷みにくいテレピン、灯油などをおススメしています。

ちなみに筆が一番、痛まないのは「漆」で洗うことです。
‣ 漆での筆の洗い方動画
特に高価な「蒔絵筆」を洗う際には漆で洗ってください。

 

筆に漆を付けて、いきなり塗り始めると、初めのうち、テレピンの影響で薄くなる可能性があります。
ですので、「塗り始める」前に一度、筆に漆を含ませて、筆と漆とを馴染ませてください。

 

 

漆の準備

 

筆の準備が済んだら、今度は漆の用意をします。

漆の中にゴミがたくさん入っている場合などは「濾し紙」で漆を濾してきれいにします。

必要な方はこちらをご覧ください↓

urushiway▸ 基本的な漆の扱い方・濾し方

 

 

▪実作業▪

 

違う器の「捨て塗り作業」ですが、参考になりそうな動画です↓


 
4:18~9:53まで再生

 


 
0:43~3:44まで再生

 

 

漆、塗ります。

平皿の金継ぎ修理で漆を塗っていく

 

まずは「極細筆」を使って「細い線」を描いたり、「輪郭」を括っていきます。

 

インターロンの極細筆(417 丸0号)

 

 

塗りの手順
▪▪▪

 


始めは「極細筆」↑を使用


㊧ 塗りの手順は「広い面」も「狭い面(線)」も同じです。

1.㊨ まずは「極細筆」で輪郭を塗っていきます。
キワキワまで塗り残しが無いように気を付ける。かつ、なるべくはみ出さない◎

 


  

ここからは「小筆」↑を使用

2.「小筆」輪郭の内側を塗り潰します。
とりあえず内側全体に漆を配ってしまいます。

3.㊧ 修理箇所の「短手方向」(例えば左→右)に小筆を細かく通す。
「隙間」が空かないように、「筆を通した跡」に少し被せるようにして次の筆を通す
※ 下図を参照してください。

線が細過ぎて、「短手方向に」筆が通せない場合は無理せずスルーしてください。
(Ⓑの細い箇所)

4.㊨ 反対方向の短手側に筆を通す。

これら作業の際、「漆の塗り厚」がなるべく均一になるように意識して、筆を通してください。
ちょっと「漆の厚いところから、薄いところに移動させる」ような感覚です。
つまり、漆の表面を「撫でるように」筆を動かすのではなく、もうちょっと筆圧を上げる感じです。

「筆を通した跡」に少し筆を被せて通す…とは↑こうゆうことです◎
(伝わりますか??)



5.同様に「長手方向」にも筆を揃えて通します。
線が細過ぎて、「短手方向に」筆が通せなかった部分でも、「長手方向」になら通せることが多いので、できるだけ筆を通して、漆の厚みを均一にしておきます。

特に最後の「通し」では、「筆跡(筆を通した筋)」を消すような感覚で、撫でるような筆圧で通してください◎
 

 

 

基本的なことなのですが、一応、「キワの塗り方」についても説明しておきます↓

 

「キワ」塗りの手順
▪▪▪

「極細筆」でキワを塗るときの手順です。

極細筆」↑を使用

 
※ 修理箇所の部分だけを「塗り残し&はみ出し無く」きれいに塗りたい場合の話です。
漆がはみ出しても気にしない方針でやっている人は読まなくて大丈夫です◎
 

 
↑最初からキワキワを攻めて一発で塗れたら、めちゃくちゃオッケーです◎
 
ですが、「一発」で「はみ出し&塗り残し」なしで塗るのは至難の技ですよね。
 

 


一発でキワを塗ろうとすると下図のように↓

所々、はみ出してしまう箇所が出てきやすくなります。

ですので、「はみ出さないで塗りたいな~」という人は、塗りの一発目からキワのぎりぎりを攻めすぎない方がいいと思います。
(特に技術がついてきていないうちは)
 

 


  

まずは上図↑のようにキワの「ぎりぎり内側を塗る」ような感覚を意識します。
キワの「境界線の内側」を強く意識します。

所々、キワに「塗り残し」があってもいいです。
「はみ出す」よりも「塗り残す」方がいいです◎

もちろん、きわきわまでピタッと塗れたら、それが一番いいです。



次にキワの塗り残しを、筆を何度か通して塗り潰していきます。

筆を何度も通しつつ、修理箇所の「内側から外側(「キワ」の境界線)に向かって」、徐々に漆で塗り潰していくようなイメージでキワ塗りの作業をおこないます。
 

 
 
 

錆漆を研いだ後、黒い漆を塗っていく

 

どこから塗っていってもよいのですが、「器を持つ場所」や筆を持つ方の手の「小指の置き場」がなるべく確保できるように考えて塗っていきます。

基本的には器の内側から始めて、次に器の外側という手順がよろしいかと思います。

 

塗りやすい場所から塗っていくが、あとあと手を置く場所やお皿を持つ場所がなくならないように気を付けて塗る順番を決めていく

錆漆の上を「塗り残しない」ように塗っていきます。

なるべくはみ出さないように気をつけます。

 

もし、漆を塗っていて「うっかりはみ出してしまった!!」場合は…↓

 

漆がはみ出した時
の掃除
▪▪▪

 地塗り以外の漆塗りの場合(漆の捨て塗り/下塗り/中塗りの場合)

・アルコールをほんのり含ませた綿棒でピンポイント掃除
・アルコールを付けたウエス/ティッシュで全面拭き取ってやり直し
朴の木ベラでピンポイント掃除
(ルーペで見ながら作業するとやりやすい)

 

 

 

矢印方向に黒い漆を塗っていく

錆漆の上を完全に覆うように塗っていってください。

錆漆は防水ではないので、最終的に仕上がった時に表面に出ているとそこから剥がれる原因となります。

 

器の表面の漆塗りが完了

今回は「幅が広い箇所」がこの↑「口周りの欠け一カ所」のみでした。

ここだけは
「極細筆」で輪郭を描いて
   

その「内側」を…

 

インターロンの小筆( 1026 丸2号)

「小筆」↑で塗り潰しました。

他は「細い線」だったので、ほとんど極細の筆しか使いませんでした。

 

 

 続いて器の裏側です。

器の裏側も同様に漆を塗っていく

 

 

矢印の方向にはみ出しすぎないように気を付けて漆を塗り進める

はみ出さないように気を付けて塗っていきます。

 

錆漆を完全に覆うように、塗り残しの内容に気を付けながら漆を塗り進める

 

漆を塗る時って
やっぱ「一筆描き」じゃなくちゃ
ダメなんですか??

確かに「一筆描き」…って「達人」っぽいですね◎
でも全然、こだわらなくていいです。

それよりも、同じところを筆を数回通して、なるべく「漆の厚み」が一定になるようにしてください。

 

器の縁、側面も気を付けて漆を塗る

器の縁の部分もお忘れなく。
ちょっと塗りにくいです。

 
 

 

ご注意!

漆は厚く塗ると「縮む」可能性があります。
ですので、基本的には「薄く」「均一」になるように塗っていきます。

ちぢむ??
って何ですか?

 

漆のちぢみ
▪▪▪

  縮みの影響 

・こんな感じに↑漆の表面がシワシワになる
・表面は乾いているのに、塗膜の内側は乾いていない
内側まで乾くのに2~3週間くらいかかります。

塗膜表面と塗膜の中の方との乾くスピードに「差」があり過ぎるとこうなるのだと思います。多分。

 

  縮みが起こる条件 

① 漆の塗り厚が厚過ぎる
② 乾きが早すぎる
・湿し風呂の中をあまりに高温湿度条件にした場合
・濡れタオルが近すぎる場合

 

  縮んだ場合の対処方法 

① 放っておく(内側が乾くまで気長に待つ)→乾いたら研ぐ→塗り直す
② 固めのヘラなど(刻苧ベラとか?)でシワシワの箇所の塗膜を剥がす
※ 塗膜が柔らかいので、簡単に剥がせる。
→アルコール+ウエスでゴシゴシ拭き上げる→研ぐ→塗り直す

基本的には②の「剥がして→やり直す」方がよろしいかと思います◎

 

 

 

器の裏側も漆の下塗り完了

塗り終わりました◎
はい、完了です。

 

 

 

漆を乾かす

作業が終わったら湿度の高い場所に置いて漆を硬化させます。
そう、漆は空気中の水分を取り込んで硬化するのです。不思議な樹液ですね◎

 

【漆が乾く最適条件】

 

え~!
「高」湿度!の場所??

はい、その通りです◎

漆が乾く上記の条件を作るために「箱」を用意します。
手っ取り早く手に入る「段ボール」を例にご説明します。

① まず下にビニール袋を敷いて、段ボールが濡れるのを防ぎます。
次に濡らして「固く絞った」キッチンペーパー(もしくはウエス)を中に置きます。

② 作業が終わった器を入れます。できればウエスから少し離した場所に置きます
(上の画像よりも、もう少し離れた場所に置いた方がいいです)

③ 蓋を閉めて、湿度が逃げないようにします。
④ 鳩は入らないようにします◎

 

漆の乾きがよくないようでしたら、こまめに湿度を与えます。(5時間おきとか)
大体の場合は、初めに湿度を与えてあげればしっかりと乾きます。

※【箱】…段ボール、コンテナ、発泡スチロール…等々、何でも構いません。
要するに湿度が逃げない(逃げにくい)ように「閉じた空間」が作れればオッケーです。

※【布類】…水を含ませておくためのものですので、何でも構いません。
使っているうちにカビが生えたり、匂いがしてきたりするので、「キッチンペーパー」が使い勝手がいいようです。(匂ってきたら捨てられますから)

漆の乾きに1~2日間待ちます。

 

 

??何で「湿度の高い」場所に置くの??乾かないんじゃない?…と思われますよね。
実は漆が乾くメカニズムというのが、普通じゃないんです。

 

漆が乾くとは…

…ということなのです。
漆の世界では「硬化」することを「乾く」と呼んでいる…ってことです。

「ラッカーゼ」が元気に働いてくれると、漆が硬化するということでして、、、

【漆が乾く最適条件】

湿度:70~85%
温度:20~30℃

ということになります。

だたし、この条件は「最適条件」ということでして、この条件を上回っていても、下回っていても、乾きます
しかし、この最適条件から
●「下回るにつれ」と「乾きづらく」なっていき、「大幅に下回る」と「ほぼ乾かなくなる」こともあります

「上回るにつれ」と「乾きづらく」なっていき、「大幅に上回る」と「ほぼ乾かなくなる」こともあります

のでご注意ください。

 

 

「段ボールなんてダサくて嫌!」という方は↓のページを参考にバージョン・アップさせていってください。

▸ 段ボール漆風呂の作り方

 

 

使用「後」の筆の洗い方

 

 

漆を使った筆は作業後、「油」で洗います

 

油で洗わなで、アルコールやテレピンで洗うと筆の中に僅かに残った漆が硬化するので、次第に筆がゴワゴワしてきて使い物にならなくなります。

 

作業工程 

① 折り畳んだティッシュで漆の付いた筆を包む。

② ティッシュを摘まんでギュッと漆を絞り出す。(数回おこなって、しっかりと絞り出す)

③ 筆に油を含ませる。

④ 作業盤の上で捻ったりしながら油を馴染ませる。

⑤ 筆の根元からヘラで「油+漆」を「優しく」しごき出す

(特に毛先はヘラが強く当たらないようにする。強く当てると毛先が劣化してカールしてきたり、まとまらなくなってきます)

⑥ ヘラで廃油を掬い、ティッシュに吸わせる。

⑦ 再び油を含ませる

⑧ 作業盤の上で、ヘラを使って絞り出す

⑨ 廃油の中に漆分が(ある程度)含まれなくなるまで…つまり「透明度」が高くなるまで繰り返す。

⑩ 最後に綺麗な油を筆に含ませ、軽くティッシュに吸い取らせます。

⑪ 洗い終わった筆は付属のキャップをして保管する

 

使う道具/材料

サラダ油
ゲル板
・ティッシュペーパー
・エッジが鋭くないヘラ(筆洗いベラ)

 

 

① 折り畳んだティッシュの上に漆の付いた筆を置きます。

② 両側から筆をティッシュで包んで、ぎゅっと摘まみ、漆を絞り出します

③ これを数回おこなって、しっかりと絞り出します。

 

この時点でしっかりと漆を絞り出してしまった方が、この後の「油で洗う」時、筆が早く綺麗になります◎

 

③ 油の入った瓶に筆を入れて、油を含ませます。


ゲル板の上で優しく捻ったり、クネクネ(?)させたりして、筆に油を馴染ませます
(こんな表現でいいんでしょうか?)

 

⑤ ゲル板の上で筆の根元からヘラで「油+漆」を「優しく」しごき出します

※ 「優しく」しごかないと筆が痛みやすくなります。特に「毛先」が痛みやすいので、毛先は軽く触る程度にしてください。

根元に漆が残りやすく、それが影響して、筆先が割れてくると思われますので、入念に掻き出します。

 

⑥ 筆の中の「油+漆」の廃油がしごき出せたら、ヘラで廃油を掬い、、、ティッシュに吸わせます。


こうして廃油をどかしておくと、作業盤の上が常にクリーンな状態で筆の洗い作業ができます◎

 

この後は「③→④→⑤→⑥」を繰り返します
廃油の中に漆分が(ある程度)含まれなくなるまで…つまり「透明度」が高くなるまで繰り返します。

 

 

 

⑦ 最後に綺麗な油を筆に含ませ、軽くティッシュに吸い取らせます。

⑧ 付属のキャップを被せて終了です◎

 

※ キャップが無かったらサランラップを丁寧に巻いてください。キャップがない、もしくはキャップを作りたいという方はこちら↓を参考にしてください。
▸ 筆のキャップの作り方

 

 

使用後の筆の洗い方でもっと詳しく知りたい方は↓こちらのページをご覧ください。
▸ 使用後の詳しい筆の洗い方

 

 

 

 

 

【 お掃除、お掃除 】
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全ての作業が終わったら作業板を掃除します。

テレピン(又はエタノール、灯油など)を垂らして、ウエスやティッシュできれいに拭き取ってください。

 

  caution ! 

厳密に言うと、掃除をし終わった後の作業板の上には「ごくごく薄っすら」と漆の成分が残っています
ですので、この作業が終わるまではしっかりとゴム手袋をして、ゴム手袋を外したあとは作業板を含めて漆の道具類を触らないようにした方がいいです。

 

 

 

本日の作業はここまでです◎
お疲れ様でした。

 

 

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