取っ手が割れた急須の金継ぎ修理方法(やや概略) 1/3 ~麦漆接着まで(古川まみさん)

取手の壊れた急須の金継ぎ修理

※ 取っ手とその周辺が壊れた急須の金継ぎ修理のやり方を説明していきます。本物の漆を使った修理方法ですので「かぶれる」可能性があります。ご注意ください。

今回は金継ぎの工程のうち〈壊れた破片素地をやすりで削る~壊れた取っ手を麦漆でくっつける〉までのやり方を解説していきます。

 

金継ぎとは


欠けたり、割れたりした器を漆で直す日本の伝統技法です。漆で接着し、漆で欠けや穴を埋め、漆を塗って、最後に金粉や銀粉を蒔いてお化粧をします。

本漆金継ぎでは漆を使いますので「かぶれ」のリスクがあります。ですがそのリスクを引き受けてでもやるだけの価値があると思います。なんといっても「大切な想い」の詰まった器が直せるのですから。

そして金継ぎで器がよみがえった時にきっと不思議な感じがすると思います。「直った」というより、「生まれ変わったみたい」と。つまりある意味、元の器には見えず別もののようにも見えてしまう。

この不思議な感覚をぜひ味わってください。

器 information


  • 急須の作家: 古川まみさん
  • 器の特徴: 陶器、マットな釉薬
  • 破損個所: 取っ手、とその周辺!
  • 破損状況: 破片5個。ひび2箇所。木っ端微塵…というほどでもないですが、なかなか手ごわい。
  • 器のサイズ: 直径11㎝(最大幅17.5㎝…取っ手から注ぎ口の先まで) 高さ9㎝

 

取っ手の修理というのは私にとっては頭を悩ますところです。

金継ぎ修理をしても強度は大丈夫だろうか?日常使いに耐えられるだろうか?
といったところがネックなのです。

作家さんによっては取っ手が薄かったり、細かったりでそこも悩ましいところです。

姿、形は直せますが、耐久性の保証ができない。ので、取っ手の修理に関しましてはお断りすることもままあります。(結構、断っているかな)

今回の金継ぎ修理物件につきましては知り合いからの依頼だったので、耐久テストも兼ねて修理を引き受けました。

この修理で何年もつのか?ずっと大丈夫なのか?それともすぐに壊れてしまうのか?
トラブルが発生したときにはこちらでご報告します。
悲しい報告になりますね。

金継ぎの方法。修理に入る前に壊れた急須の状態を確認します。

陶器自体は程よく厚みがあります

金継ぎの方法。急須の取っ手の部分がバラバラに割れている

取っ手は幅があります。
ので、とりあえず「イモ付け」修理でも
耐久力がありそうです

金継ぎの方法。急須の取っ手の厚みから金継ぎ修理後の耐久性に問題がでないかどうか考察してみる

はい、バラバラなんです。

でも大丈夫。直ります。

素地調整のやり方

素地調整で使う道具 : 

  • リュータ―(ダイヤモンドビット使用)
  • 水を固く絞ったウエス
  • マスク

金継ぎの素地調整という工程です。
リュータ―で接着する断面をわずかに面取りします(角、エッジを削る)

普通の方はリューターを持っていないと思いますので
ご提案としてこちらを参照してください
▸ ダリュータ―ダのイヤモンドビットのカスタマイズ方法

金継ぎの方法。リューターを使って本体の割れた箇所の断面のエッジを削っていく

面取りの幅は0.2㎜くらいでしょうか?ちゃんと測ったことがありません。

 金継ぎの方法。器の割れた部分の断面のエッジを軽く削る。内側からも削っていく。

内側も面取りします。
内側は作業しづらいです。

金継ぎの方法。器に入ったひびの部分も溝を切っておく

それからひび(ニュウ)の部分もわずかに彫り込んでおきます。

金継ぎの方法。割れとともに生じたひびに溝を付けていく。これによって漆の食いつきをよくする。

 画像がありませんが、小さい破片もそれぞれ面取りします。

作業がおわりましたら最後、
水を固く絞ったウエスで粉塵をきれいに拭き取ってください。

 なぜひび部分に彫り込みを入れるかというと、
漆の食いつきをよくするため、
修理の耐久性を上げるためです。

今回の釉薬でしたら結構、漆の食いつきがよさそうですが、
特にガラス質のピカピカした釉薬の場合は漆の食いつきが悪いです。

器を使っているうちにパリパリっと漆が取れてしまったりします。

リューターはホームセンターで売っています。
安いものでしたら¥6,000~くらいからでしょうか?

金継ぎを本格的にずっとやっていこうと思っている方でしたら
購入するのもいいかと思います。ですが、普通の方はそこまでね。

 

面取りはやらない人も多いかと思うので
同意してもらえるようでしたらやってください。

ひび(ニュウ)に関しましては
やはり何かしらの下処理をしておいた方がいいと思います。
漆が剥がれないように。

粗い砥石(#180くらい)やペーパーの粗いもので
ひび部分に傷を付けておくという手もあります。

が、それより効率的だと思うのが、
リュータ―のダイヤモンドビットだけ買ってきて
それで作業する…ということです。

ダイヤモンドだとかなり効率がいいです。
ビットはホームセンターで価格が¥200~くらいから売っています。
高いものもあります。高い方がもちがいいようです。

 

器の素地固め

素地固めで使う道具と材料

  • 道具: 小筆、練り箆
  • 材料: 生漆、テレピン
  • その他: 定盤、ウエス、ティッシュ、サラダ油

まずは接着面の素地を生漆を使って固めます。

生漆 10 : 3 テレピン

くらいの割合で漆を緩めます。
定盤の上で箆を使って混ぜます。

筆を使う前に筆の中にある油分を洗い出してください
使用前の筆を洗う方法

金継ぎの方法。割れた破片の断面に希釈した生漆をしみこませていく

小筆を使い、器の接着面の素地に染み込ませていきます。
染み込まなかった漆はティッシュで押さえつつ、しっかり拭き取ります。

素地固めの詳しい説明はこちらです
素地固めのやり方

作業を終えたら筆はサラダ油で洗ってください。
使用後の筆を洗うやり方

 生漆が乾きかけのころを見計らって次の作業にかかります。
(ちょっとペタつくころ)

と言っても皆さんは漆を触るわけにもいかないですから、
だいたい6~12時間以内に次の作業に移ればいいと思います。

もし何日か経ってしまったとしても
大きなトラブルを招くわけでもないので
それほどお気になさらず。

 

麦漆で接着

麦漆接着で使う道具と材料

  • 道具: 小筆、付け箆(▸ 付け箆の作る方法)、練り箆、マスキングテープ、はさみ
  • 材料: 生漆、小麦粉、水
  • その他: 定盤、ウエス、テレピン

 

 金継ぎの接着は「麦漆」というものを使います→麦漆の詳しい作り方

 麦漆を塗布する前にあらかじめどのパーツがどの部分に来るか確認しておきます。

できれば接着する順番に並べておいた方が、
あとで「これどこだったっけ?」と焦らずに済みます。

▸ 麦漆の塗布の方法


 金継ぎ修理の工程。器の破片ひとつひとつの断面に麦漆を塗布していく

接着する断面すべてに麦漆を塗布します。

薄くなるように塗ってください。
厚塗りしますと、接着したとき器の形が歪んだり、ズレたりしやすくなります。

金継ぎの方法。器の本体の方にも麦漆を塗る

本体にも麦漆を塗布していきます

金継ぎの方法。器本体の割れた断面にも麦漆を塗る

 麦漆は乾くのが遅いので、
ゆっくり慌てることなく作業ができます。

金継ぎの方法。本体、麦漆の塗布完了

麦漆の塗布が終わりましたら、すぐに接着せず
硬化が進むまでしばらく待ちます。

目安としましては塗布した麦漆の表面の濡れ色が引けるころまでです。

▸ 接着後の器の置き方


その他の接着後の置き方の例
接着時の器の置き方

 金継ぎの方法。麦漆接着後、急須を逆さまにして固定する。このまま2週間くらい乾かす。

重力がかかった時に(いつもかかっているはずですが)、
接着箇所に都合よく圧力がかかるように加味して器を安定させます。

 金継ぎの方法。急須の固定に、今回は綿棒ケースを利用

今回は結構アクロバティックな置き方です。
綿棒ケースを使いました。

金継ぎの方法。重力を利用して破片同士が圧着される置き方にする

接着箇所以外に意図せず麦漆が付いてしまった場合、
綿棒にテレピンを含ませ拭き取ってください。
(エタノールの方が強力に拭き取れます)

金継ぎの方法。陶器の接着後の置き方

はい、安定しています。気がします。

金継ぎの方法。マスキングテープ使って接着のアシストをする

マスキングテープを補助的に使って、
接着箇所がずれにくいようにします。
(でもやっぱり少しはズレてしまいますよ)

マスキングテープはあらかじめ何本も短冊状に切って並べておきます。

 金継ぎの方法。取っ手部分はマスキングテープを利用する

このまま安定したところに置いて硬化に2~3週間待ちます。

麦漆は乾くのに時間がかかります。

気長に待ってください。

 

 

次の作業工程を見る ▸ ② 錆漆付けまで

他の作業工程を見る ▸ ③ 蒔絵完成まで 

 

 

 

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