カップの口元の金継ぎがすぐに剥げる…(涙)。その原因とは?

投稿日 2018/01/10

 

 

size19 まいっちゃうな~

 

あけましておめでとうございます。
しばらくぶりでございます。二か月間くらい間が空いてしまいました。済みません、サボっていました。

さて、久々の投稿コンテンツは「金継ぎ図書館お悩み相談室」です。
(そんなコーナーあったっけ??はい。あるんですよ◎)

今日は岡山県在住のN.Y子さんからのお悩み相談です。

 

 

【 悩みのタネ 】

 

(…中略…)

作家さんのものをカフェで使っています。
その中で、割れた食器を自分たちで金継ぎして使えるようにしようということになり、何もわからない状態から金継ぎを始めました。

半年ほど悪戦苦闘しながらやっていたのですが、
やっとこれで大丈夫かな…?というくらいまでになれた気がします。

そして、直したものをカフェに出してみると
私が思っていたよりも早いスピード(2週間くらい)で気付けば剥げていってしまいます。

よく使うものなので仕方ないのかな?とは思いつつ、長持ちさせる方法や扱いで気をつける点などございましたらお教えいただけないでしょうか…?

因みに、金粉(真鍮粉)を蒔いた後には乾かして透漆を塗ってよく拭き取って、乾かしています。
カフェに入る人には漂白剤につけちゃダメだよ とは伝えております。

添付写真が見えにくいかもしれませんが、ご確認いただき、ご意見いただけますと幸いです。
ご不明な点などございましたらいつでもご連絡いただけたらと思います。
長々と失礼いたしましたが、どうぞよろしくお願いいたします。

 

N.Y子

(一部、加工、修正しました:お悩み編集室)

 

フレンドリーな文面のお便りです◎

なるほど。「剥げ」問題ですね。(「はげ、はげ」って言うと嫌がる人もいますかね?ごめんなさい)

こういう案件はひとまず、「現場」へ急ぎましょう!

 

↑こちらが現場です。

あら、自学自習だとのことなのですが、上手ですね~◎

 

なるほど、なるほど、これですか~。

で、ここでクエスチョンです!
皆さんだったらこのお悩みにどう答えますか?N.Y子さんから送られてきたこの文章、写真から、考えてみてください。
(金継ぎ師を目指されている方はぜひ、ここで自分なりの答えを出してから、ページ下へと読み進めてください◎)

 

 

Reasoning:推理


相談を受けたこちら側として把握したいのは、どういった状態のことをN.Y子さんは「剥げた」と表現しているのか??です。

一口に「ハゲた、ハゲた」といってもいろいろなハゲ方があります。

  1. ずりずり擦られて、全体的に摩耗して薄くなった状態を言っているのか?
  2. 一部がパリッと剥がれたようになっているのを「剥げた」と表現しているのか?

(最初、メールを読んだ時、僕は①の方のことを言っているのかな?と思っていました)

 

送られてきたメールの文面からヒントを探していきます。

直したものをカフェに出してみると
私が思っていたよりも早いスピード(2週間くらい)で気付けば剥げていってしまいます。

↑重要な情報はここです!具体的な時間を書いておいてくれたので助かりました!
2週間で剥げる…って早すぎますよね。半端じゃない「ハゲッぷり」です!基本的に大切に注意して使っていれば何年経っても剥げないです。(私が使っているものは剥げていません)

 

二週間で「剥げる」ということは、相当な摩擦(研磨?)が生じていたからだと推測するわけです。うん、間違いない。

 

次に、送ってもらった画像から分析し、推測します。

↑これです。どうでしょうか?
ここからどう推理しますか??

 

↑こちらの写真をもう一度見ると…

① ずりずり擦られて、全体的に摩耗して薄くなった状態を言っているのか?

どうも、私の↑この考察は当てはまらないわけです。真鍮粉の金色がピカピカしていますので。
ずりずり擦られていたら、真鍮粉の下の漆(赤色か黒色)が薄っすらと見えてきているはずです。

 

 

で、もう一度、写真をよく観察してみます。

この「赤の矢印部分」が剥げたと言ってる部分なんじゃないか?と思うわけです。

何でそこが「事件現場だ!」って鳩屋さんは思うわけ??
N.Y子さんは「そこ」だとは特に言及してないですよね。

それはですね~、「勘」です◎
いや、これは経験から導き出される推測です。

 

この部分はよく見ると、コップの縁フチですよね。この「エッジ」「尖った部分」というのは剥げやすいのです。

なーんでか?って言うと…

  1. エッジ部分は漆がのりづらいので、塗膜が薄くなる。
  2. 他の器やモノに当たりやすい(擦れやすい)。

からなのです。

 

①の漆がのりづらい理由ですが、漆って粘度が高いのですが、あくまで「液体」なんです。なので、尖がっている部分に塗ると、どうしてもその脇に流れてしまうのです。

 

あ、しつこいですか?ふふふふ。
先っちょ先生には乗りにくいのです。

 

 

続いて②の説明です。

 

よくあるパターンは「他の器と重ねた部分が擦れている」…です。

  • 流しのシンクの中に置いとく時に他の器に擦ってしまった。
  • 水切りのラックで乾かす時に、他の器と擦ってしまった。
  • 食器棚の中で他の器と擦れてしまった。

擦れた相手の器がガラスのようにツルツルしたものだったら、ダメージはほとんどありませんが、相手がガサガサの陶器の場合、やすり掛けをしているようなものですので、当然、金継ぎ部分が研がれて擦り減ってしまうのです。
相手が「そこそこ」ツルツルした食器だったら、徐々に「そこそこ」研がれて、やがては擦り減っていきます。

 

とうやって対処したらいいの??というと、最善の策は面倒ですが、陶器と重ねる時は「間紙あいし」を挟むことでしょうか。
でも、それはすごく面倒そうですよね~(涙)

単純に「気を付ける」だけでも、結構、大丈夫です。器を重ねてから(接触したまま)動かすと、研磨されてしまうわけですから、

  • 接触させたら動かさない、左右に振らない
  • 垂直離着陸をこころ掛ける

というところでしょうか。

それから、これは僕もやってしまったことなのですが、↑ステンレスの水切りラックに置いた時に、気を遣わずに金属に擦っていた…ということです。

塵も積もれば山となるで、やっぱり擦り続けていたら、エッジの部分だけ半年くらいで剥げてしまいました(涙)
その後、剥げた部分だけを誤魔化し気味にやり直し、使っています。なるべく擦らないように気を付けているだけで、今のところ問題なくいっています。2年くらい経っていますがオッケーです◎

 

これら、推測したことを元に、質問者のN.Y子さんに返信してみました。
そうしたら、だいたい推論は合っていたようです◎
(ナイス!金継ぎ図書館◎ やっぱり頼りになるぜ!)

 

 

 

写真から得られる情報量は膨大です◎

質問者が言葉にできなかった微妙なニュアンス、質問者がフォーカスしていなかった重要な情報を写真から読み取ることができます。
(今回はたまたま当たっていただけかもしれませんね~)

 

 

 

 

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