欠けた上泉秀人さんカップの金継ぎ方法 1/5 ~錆漆付けまで

金継ぎで直す欠けたカップ

※ 口元が欠けたカップの金継ぎ修理のやり方を説明していきます。本物の漆を使った修理方法ですので「かぶれる」可能性があります。ご注意ください。

今回は金継ぎの工程のうち、〈欠けた部分の器の素地をやすりで削る~欠けを錆漆で埋める(1回目)まで〉のやり方を解説していきます。

金継ぎとは


金継ぎとは欠けたり、割れたりした器を漆で直す日本の伝統技法です。漆で接着し、漆で欠けや穴を埋め、漆を塗って、最後に金粉や銀粉を蒔いてお化粧をします。

この「壊れた痕を目立たせる」修理方法は日本独自のものだと思います。普通は傷って隠したくなるものだと思いますが、なぜ敢えて金を蒔いて強調したのでしょうね?
傷に金を蒔いて仕上げる「金継ぎ」は室町時代の茶の湯から始まったようですが(不勉強で詳しくは知らないのですが)、器を漆で修理すること自体は縄文時代から行われていたようです。
祭器の中にわざわざ漆で継いで直したものが見つかっています。「作り直す」ではなく、「継ぎ直す」でなければならなかった理由が何かあるはずだと思います。「壊れたもの、解体したもの」が「再び繋がり合う、継ぎ合わされる」というプロセスをくぐり抜けたものだけが獲得し得る「力」のようなものを古代の人はリアルな身体実感として理解していた。だからこそ継ぎ直したのではないかと推測します。
千宗屋さんの本に、茶の湯の究極的な目的は”直心の交わり”だと書かれています。直心の交わりを成立させるためには、その場に居合わせた各人それぞれが「自我のフレーム」を手放す、もしくは一度解体する必要があります。主も客も道具も空間も一度そのアイデンティティがすべてが解体される。そしてばらばらになった破片同士をひとつに継ぎ直すことによってその場に「共身体」のようなものが立ち上がる。その時、「わたし」も「あなた」もなくなった”直心の交わり”がなされる。
室町の茶人たちは「漆継ぎ」の中に「解体→再構築」のプロセスを通過したときに立ち上がる不可思議な「力」を具現化したものとして再発見した(つまりもともとあったのだと思います)。その思想をもっとビビットに表現する手段が「金継ぎ」だったのではないか、と思います(昨日、思いました)。
さらになぜ「金」にしたのか…と書き出すとさらに長くなるのでまた今度にします。

とにかく金継ぎをやってみてください。やってみると「なんかヘン」「なんか不思議」という感覚を覚えます。手元の傷をしげしげと眺めつつ、ずずずとお茶を呑む。その不可思議な体験をぜひ。

 

器 information


  • 器の作家: 上泉秀人さん
  • 器のサイズ/特徴: 直径78㎜×高さ72㎜ /磁器・ツルツルのガラス質の釉薬
  • 傷の場所/サイズ: 欠け、口元の縁部分、2か所/①10㎜×15㎜ ②10㎜×5㎜
  • 仕上げ: 金粉仕上げ

 

欠けた器の傷の具合をチェックする。

まずは金継ぎ修理する器をしげしげと眺めます。柔らかい水色の釉薬がいいですね。

依頼された傷以外にも損傷がないかチェックします。いろいろな角度から見ます。よくあるのが「ごく小さい欠け」と「うっすらと入ったひび」です。

器の欠けをチェックしながら金継ぎの修理方針を立てる。

と同時に修理の手順・方向性をイメージします。

❖ ツルツルピカピカしたガラス質の釉薬なので金継ぎの「錆漆」工程で錆漆がはみ出してもきれいに拭き取れます。(もしくは固まった後、彫刻刀できれいに剥がせます)
→ということでマスキングの必要はなさそうです。

❖ 欠け部分が深くない(パテを盛って直すほどではない)
→なので錆漆2回くらいで欠けが埋められそう。

❖ 器自体の持っている雰囲気…今回の器は精度の高い端正な仕上がりです。
依頼主の雰囲気…温厚でダンディーな(一見するとちょいワルな感じの)おじさまです。
などを考慮して、金継ぎの仕上がりのライン・形をイメージします。
→今回は傷のラインをビビットに拾う(ガタガタしている)よりかは少しシンプルなラインに整理した方がよさそうだなと思いました。

この段階で明確に完成図が見えないことがほとんどです。何となくの方向性がとりあえず立てられればいいと思います。実際に修理していく中で「もうちょい、こうした方がいいな」とわかることが多いです。

 

step 01 器の素地調整


金継ぎの素地調整で使う道具: リューターのダイヤモンドビット(値段\200~)

 ▸ ダイヤモンドビットのカスタマイズのやり方

金継ぎの素地調整のやり方。リューターで欠けのエッジを削っていく。

欠けた部分のエッジを軽く削ります。うっすら「面」を作ります。

金継ぎの錆漆が載る部分もやすりがけして傷をつけておく。

錆漆や漆塗りの金継ぎ工程で器の素地への食いつきがよくなるように、軽く傷をつけておきます。

リューターで欠けた器のエッジを軽く削る。

とんがった欠けの方もダイヤモンドビットでやすり掛けします。
エッジを軽く取ります。

金継ぎの素地調整で器の口元のエッジもうっすらと削っておく。

口元の方のエッジにもやすり掛けします。

金継ぎの素地調整の工程。エッジを削る。

↑わずかですが、削れています。

 

step 02 錆漆一回目を付ける


金継ぎの錆漆付けで使う道具と材料(▸ 錆漆付けで使う道具・材料の入手先・値段

  • 道具: プラスチック箆、付け箆(▸ 付け箆の作り方)、綿棒、豆皿
  • 材料: 生漆、砥の粉、水、テレピン

錆漆を作ります。 ▸ 詳しい錆漆の作り方

 

 今回は金継ぎする傷が浅いので錆漆を使います。
錆の盛り厚は1回につき1.5㎜以下くらいがいいと思います。なので今回は2回にわけて欠けた部分を埋めていきます。
傷が深い場合は刻苧漆を使って埋めてください。(▸ 刻苧漆の作り方

 

小さめの欠けから埋めていきます。

金継ぎの錆漆付けの方法。箆に少量の錆漆を付けて、それを欠けた部分に盛っていく。

作業板の上の錆漆から付け箆の箆先に少量、取ります。
箆先に載った錆漆を欠けの口元エッジ部分にこすりつけるようにしながら置いていきます。

金継ぎの錆漆付けのやり方。錆漆をもう一度少しだけ欠け多分に付ける。

錆漆の量が少なかったのでもう一度、箆先に少量の錆漆を取ります。

欠けた部分に載せた錆漆を箆で均す。

同様に口元のエッジ部分に沿わせるように錆漆を置いていきます。

金継ぎの錆漆付けで載せた錆を箆で左右に均していく。

次に箆を上下左右に通して、欠け部分の内側にしっかり詰め込んでいきます。
いろいろな方向に箆を通さないとほんの少し隙間が空いてしまうことが多いので注意してください。

錆漆付けの完了。

 錆付け一回目はこんなもんで。

器の内側から見た錆漆。

器の内側から見た画像です。
錆漆が少し凹んでいますが、これでオッケーです。一回で厚盛りしない方がいいのです。が…

大きな欠けの方にも金継ぎの錆漆付けを行う。

次に広い面積の方の欠けに錆漆を盛ります。
この欠け部分は面積が広いのですが「深さ」がないので麦漆より錆漆で埋めていった方が適していると思います。

少量の錆漆を箆で載せていく。

錆漆を載せます。ぜんぜん足りていません。

金継ぎの錆漆の方法。錆漆をさらに載せていく。

錆を付け足していきます。

欠けた部分に載せた錆を箆で左右に均していく。

今度は口元のエッジ部分に箆をこすりつけるようにして錆漆を付けていきます。

金継ぎの錆を箆で均して隙間がないようにする。

欠け部分に載せた錆漆を箆で左右に通して、均していきます。

錆漆を上下左右と箆を通して均す。

上下にも箆を通して、しっかり隙間なく錆漆が入り込むようにします。

金継ぎの錆漆をチェックする。厚いところがないか気を付ける。

様々な角度からチェックして盛りすぎや薄すぎている部分がないか確認します。
といっても錆漆は乾きが早いのであまりじっくりとは作業がしていられません。
錆漆を箆で触った時にボサボサしてきたら作業は諦めてください。
乾いてからもう一度やりましょう◎

器の内側から金継ぎの錆をチェックする。

器を上から見た画像です。

金継ぎの錆漆付けが完了。

金継ぎの錆漆付け1回目が完了しました。

なかなかうまくいきました…のつもりでしたが失敗していました。
どうやら錆漆に混ぜた漆の割合が多かったようで「縮んで」しまいました。

がっくし…

錆漆が縮んだ時のリカバリー方法に興味のある方はこちらへ
▸ 錆漆付け失敗したときの復活方法

 

次の工程に進む ▸ ② ~錆漆の削りまで

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