【初心者Web金継ぎ教室】割れたお茶碗の修理方法②-2後編~錆漆付け1回目まで

投稿日 2019/06/18▸ 更新日 2019/06/20

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  ファイツ!!

パックリと割れてしまった飯碗の金継ぎ(金繕い)修理のやり方を説明していきます。
今回は金継ぎ作業の〈錆漆(漆のペースト)を充填する〉までのやり方を解説します。

 

本日の「道のり」はというと…

前半戦、最大の山場となります。
「しっかりと乾く錆漆(漆のペースト)を作れるか?」ということと、「きちんと錆漆で穴や凹み、段差を埋めることができるか?」が、最大の難所となります。

タフな一日となるかもしれませんが、じっくりとこの道のりを攻めていきましょう◎
大丈夫、このページのナビについてきてくれたら、きっと難所は超えられるはずです。

 

 

 

 

 

前回の作業ご覧になりたい方はこちらをクリックしてください。↓

 
 
 

 

 

 

 

今回のシリーズで金継ぎ情報を「お届けしたい人たち」

それはどんな人たちかというと、、
「いや、そんな本気で職人さんみたいにガチガチに綺麗な仕上げを目指しているわけじゃないんです」
「普通に実用として使えて、そこそこ綺麗になっていれば大満足なので、そのやり方を教えてください」
…という人向けです。

 

 

動画でも本日の作業内容が確認できます。
まずはこちらをご覧いただければ今日の作業の全体感が掴めると思います◎

 

段差を埋めるまで~

□□□□□□□□

※ Step04/6:50~から始まります)

▫▫▫〈動画もくじ〉▫▫▫▫
6:50~ ④ 錆漆(ペースト)を作る
8:08~ ⑤ 錆漆を付ける
 ー 8:23~ 「割れた箇所に」錆を付ける
 ー 12:00~ 「小さな欠け」に錆を付ける
 ー 12:29~ 「大きな欠け」に錆を付ける
▫▫▫▫▫▫

 

 

 

 

⑤ 錆漆(ペースト)を作る

初心者作業時間/約15分

金継ぎでは「充填材」として
刻苧漆こくそうるしと呼ばれる「粘土状のパテ」
錆漆さびうるしと呼ばれる「泥状のペースト」
の2種類を漆を使って作ることができます。

それぞれに特徴がありまして、、
①刻苧漆…粘土状なので比較的成形しやすい。錆漆より厚く盛れる
②錆漆…泥状なので小さな穴や隙間に入り込む極薄に盛ることもできる
といった感じになります。

今回、直している器の場合、「接着時に生じた隙間僅かな段差を埋めたい」ので、使うのは②錆漆となります。(欠けている箇所は刻苧漆の方がよかったな~と反省しています)

 

 

⑤-1. 錆漆作りで使う道具・材料

 

  道具 
③ 作業板 ▸作り方 ⑤ 練りベラ ▸作り方 〇 軽量スプーン(1/4)

  材料
① 水 ② 生漆 ⑥ 砥の粉

〈作業盤の掃除用として〉
〇 テレピン 〇 ティッシュ(もしくはウエス)

▸ 道具・材料の値段/販売店 


※ 使う計量スプーンは「1/4」「1/10」サイズがお薦めです。
よほど大量の麦漆が必要でない限り1/4サイズで十分です。1/10サイズはほんの少し作りたいときに使います。

※ 「作った」錆漆さびうるしについての注意点ですが、”正味期限”は1~2日くらいと考えてください。 
作った時が一番「乾き」がよく、時間が経つほど、どんどん乾きが悪くなってきますので、基本的に「使うときに作る」が原則です。
保存があまり効かないので、「作り置き」は避けてください◎

 

 

 

 

 

 

⑤-2. 錆漆を作る

 

 

錆漆(漆のペースト)

砥の粉:生漆 = 10:7~8

※ 目分量の体積比

 

 

▪錆漆作り▪~

□□□□□□□□

詳しく「麦漆の作り方」をご覧になりたい方は
‣ 初心者向け”麦漆”の作り方

 

 

 

①まずは計量スプーンで砥の粉を取り出し、軽くヘラで押えます。
そしてヘラで擦り切ります。
②作業盤の上に出して、ヘラで細かく潰します。

③砥の粉の横に少量の水を出します。
④ヘラを使って、砥の粉と水を練り合わせます。砥の粉に満遍なく水が行き渡るようにします。
加える水の量は「砥の粉がまとまるくらい」です。

⑤砥の粉に対して「7~8割」の生漆を用意します。この比率がすごく重要です。
⑥少量ずつ(1/3くらい)の生漆を砥の粉に足して、しっかりとヘラで練り合わせます。

⑦さらに生漆を砥の粉に加えていきます。
⑧全部の生漆を練り合わせたら完成です◎

 

詳しく「錆漆の作り方」をご覧になりたい方は


‣ 初心者向け”錆漆”の作り方

 

 

 

 

 

 

 

⑥ 錆漆を付ける

初心者作業時間/約20分

 

⑥-1. 錆付けで使う道具・材料

 

  道具 
④ 付けベラ(小さいヘラ) ▸作り方

  材料
〇 錆漆

〈作業盤の掃除用として〉
〇 テレピン 〇 ティッシュ(もしくはウエス)

▸ 道具・材料の値段/販売店 


 

 

⑥-2. ヘラ先に錆漆を取る

 

 

さぁ、いよいよ接着箇所に錆漆を付けていきます。

と、その前にヘラの使い方のレクチャーです。この一連の動作がスムーズにいくようになると、錆付け作業も楽しくなってきます◎

 

▪ヘラ先に錆漆を取る▪~

□□□□□□□□

 

ヘラの角度的には少し「寝かせ気味」にスライドさせると、ヘラの先っちょに錆漆がつきやすくなります。

↑こんなくらいの角度でスライドさせると…

↑ヘラの先っちょに錆漆が付きます◎

 

 

① ヘラで錆漆を薄く広げる。
② 広げた錆漆の右側にヘラをセットする。

③ 錆漆を掬うようにヘラを右から左へとスッと通す。
④ ヘラの先っちょに錆漆が少量乗っかる◎

作業盤の上で錆漆を広げるときに毎回、同じ厚み、広さにできるようになると、ヘラの先っちょですくう錆漆の分量も毎回、一定になってきます。

これは「慣れ」の問題だと思いますので、修練あるのみですね。

 

 

それでは実践です。

錆漆は「もたもた」作業をしていると、だんだんと固く締まってきて、ぽろぽろしてきちゃいます。
錆付け作業は「ゆっくりと作業ができない」「スピードが要求される」というところが初心者さんとって、難易度が高いところなのです。
ビギナーの方が初めから手際よくできるわけもありませんので、それほどきれいに錆漆が付けられなくても気にせずにいきましょう◎

 

 

 

⑥-3. 接着箇所への錆付け

 

 

 

▪接着箇所への錆付け▪~

□□□□□□□□

 

 

(※マスキングテープはもっと接着箇所ギリギリに貼ってください。↑これは隙間が空きすぎて失敗しているので参考にしないでください~)

まずは接着方向に沿って錆漆を置いていきます。

 

 

ずずずーっと置いていきます。狙いが外れたり、途中、錆漆が付いていない部分があっても気にせずいってください。

 

 

次に接着箇所をまたぐように「左→右」へとヘラを小刻みに通します。

 

 

ヘラの通った道が少し重なるくらいです。

 

「左→右」へとヘラを通し終わったら…

今度は逆方向「右→左」へとヘラを揃えて通していきます。

 

 

再び接着方向に沿って「下→上」へとヘラを通します。

 

 

最後に「上→下」へとヘラを通します。

これが基本的な一連の動作となります。

① 接着方向に沿って錆漆を配る。
② 接着箇所をまたぐように左右にヘラを通す。
「左→右」「右→左」
③ 接着方向に沿って再びヘラを通す。
「下→上」「上→下」

この①~③の動作を繰り返していきます。

 

器の外側も同様の手順で錆漆を充填していきます。

錆漆の付いたヘラを接着方向に沿ってズズーっと移動させていく。

 

 

ズズーーっと。
なるべく均一な厚みで錆漆を配るわけです。

 

 

次に接着箇所をまたぐようにヘラを通す。「上→下」へと小刻みにヘラを動かします。

 

「上→下」へとヘラを通し終わったら…

今度は「下→上」へとヘラを小刻みに通していきます。

 

 

再び接着方向に沿ってヘラを通します。

 

 

最後に逆方向に通す。
これでオッケーです。

 

それにしても、何でこんなに何方向にもヘラを動かすんですか?一方向だけじゃダメなの?一方向だけでも綺麗に錆漆が付いているように見えるんですが~。

なるほど、確かに、確かに。
一見すると、表面的には一方向にびーっとヘラで付けただけで、綺麗に錆漆が付いているように見えますよね◎

ちょっと解説させていただきますね。

器の接着箇所といのは、接着時にほんのわずかに生じたズレがあったり、また、接着剤である麦漆が乾くにつれて少し痩せてきますので、そこにわずかな隙間ができたりします。

この「段差・隙間・凹み」などを錆漆で埋めていきたいわけです。

 

それで錆漆を付けたヘラを一方個に通したとします。

一方向に通しただけでも、確かに表面的には「綺麗に」錆漆が付いているように見えます。

ただ、よく見ると…(実際には錆漆で覆われた、下の層の話なので、見えないのですが~)

空間が完全に埋まっておらず、麦漆と錆漆との間に空洞が残っている…ってことが起こり得るわけです。
この「空洞」は錆漆が乾いてくるにしたがって(痩せてくるので)見えてくることもあれば、錆研ぎをしているときにいつの間にか現れてくることもあります。

これを防ぐためになるべく「上下左右」にヘラを通して、空洞を潰していこうというわけです。

 

 

 

お茶碗の口周りに2か所、「小さな欠け」と「大きな欠け」があります。
それらも錆漆で埋めていきます。

 

⑥-4. 小さな欠けへの錆付け

 

まずは口周りの「小さな欠け」から。
(実はこの「欠け」は私がヤスリでやすって作った欠けなのですが~)

 

▪小さな欠けの錆付け▪~

□□□□□□□□

 point! 

・付けた錆漆をヘラで左右に動かし、器の素地に密着させる。
・「ほんの少し」多目に盛りましょう。乾いてから刃物で削ります。ただし、盛り過ぎると後で削るのが大変になります。

 

 

少量の錆漆をヘラ先に取って、小さな欠けの部分に付けます。

錆漆を少量取るやり方は↓こちらを参考にしてください。
‣ ⑥-2. へら先に錆を取るやり方

 

器の欠けた箇所に擦りつけながらヘラを画面の「右斜め下」に引いていきます。(分かりづらい写真ですね~。済みません)

そうするとヘラ先の錆漆が器の欠けた箇所に乗ります。

 

次に乗せた錆漆を「奥」の方に倒すようにしてヘラを「手前→奥」へと通します。

器の素地に密着させます。

 

今度は「奥→手前」にヘラを通します。

 

あとはヘラを数回通しつつ、形を整えます。

 

 

ちょっと凹んでいたので、もう少しだけ錆を付け足します。

 

 

なるべく綺麗に成形してお終いです。

乾いた後に刃物で削ることができますので、このくらいでいいとしましょう◎

 

 

 

 

 

やたらと長いページになってしまいました。
この下の「大きな欠けへの錆付け」の説明ですが、直している器に「大きな欠け」が無い場合は読まなくて大丈夫です◎

 

⑥-5. 大きな欠けへの錆付け

 

今回の「欠け」は少し大きめなので、「二回」に分けて充填します。
一回で充填しようとすると、錆漆が厚くなり過ぎて乾きません。(内側がいつまで経っても乾かない、「膿んだ」状態になります)

二回目の錆漆が付けやすいように意識しつつ、ある程度、盛っておきます。

 

 

▪大きな欠けの錆付け▪~

□□□□□□□□

 

 

 

少量の錆漆をヘラ先に取って、大きな欠けの部分に付けます。

錆漆を少量取るやり方は↓こちらを参考にしてください。
‣ ⑥-2. へら先に錆を取るやり方

 

 

 

①欠けている箇所の「エッジ」に擦るようにヘラを通し、錆漆を欠けた箇所に乗せます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これで錆付け作業の一回目がお終いです。

今回の修理方針としましては「とことん時間をかけて綺麗に仕上げる」のではなく、「多少、ざっくりとした仕上がりになってもいいので、なるべく手数を少なく仕上げていく」…という方針です。
ですので、できれば錆付け作業もこの1回だけにしたいところなのですが、ただ、「欠け」の箇所はこのままではマズいですよね~。この箇所だけは次回、もう一度、錆漆を付けることにします。

 

 

 

 

⑥-6.錆漆の乾かし方について

 

錆付け作業が終わったら、錆漆が乾くまで《待ち時間/1日~2日》ほど待ちます。
湿した室に入れる必要はありません
錆漆自体に水分が含まれているので、放っておいても乾きます◎

ただし、乾きの遅い生漆を使っている場合は(古い生漆など)、湿し風呂などを使って、湿度の高い環境に置いてください。

 

 

 

 

 

 

 

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