〈金継ぎDOIT道具シリーズ〉金継ぎで使う彫刻刀のカスタマイズ方法。作業がめちゃくちゃ楽になります。ほんと

金継ぎの削り作業で使う彫刻刀のカスタマイズ

満を持して「彫刻刀のカスタマイズ方法」のご紹介です。
金継ぎ作業の中で一番おススメしたかった道具が、この「平丸の彫刻刀」です。

 

「平丸」彫刻刀を使うメリット

  • 刃表は「曲面」になっているので、器の内側が削れます
  • 刃裏が「平面」になっているので、器の外側を削るときに「平面のガイド」となってくれる。
  • 刃が「前」についているので力を入れる必要がなく、コントロールが容易にできる。(カッター、メスなどは「刃」が横についているので、削るとき力を入れてなくてはいけない)
  • 刃が「厚い」ので安定した削りができる。(メス、カッターは刃が薄いので力を入れるとちょっとしなります。それを利用して削ったりもできますが)

デメリット

  • 研ぐのが難しい…と思ってしまう。けど、「そこそこ」研げていればいいので案外できちゃいます。
  • 入手が少し大変かもしれません。(「平」の彫刻刀はどこにでも置いてあると思いますが、「平丸」になるとそれほどメジャーではありません。なので今回は「平」の彫刻刀から「平丸」をカスタマイズするやり方をご紹介します)

 

 

削りにカッターナイフを使っている方、器の内側はどうやっていますか?曲面の強いものはカッターだと無理ですよね。ゴリゴリと粗いペーパーで研いでいるのでしょうか?おー、ツライですよね。私もそんな時期がありました。

かつては粗い砥石やペーパーで研いでいたこともありました。その時、「金継ぎってツライな~」と思っていました。でも、この「平丸の彫刻刀」を使いだしてからはその辛かった作業がスイスイと簡単に綺麗に進むようになりました。
この彫刻刀が無かったら金継ぎの請負い仕事はやらなかったかもしれません。

ぜひ「平丸彫刻刀」を使ってください。刻苧や錆漆、エポキシパテ、ペーストの削り作業が断然、楽になりますし、きれいに早くできます。ぜひ、絶対に、使ってください。お願いします。

 

で、金継ぎ図書館は「平丸の彫刻刀がいいぞ」とマイドマイド言っているくせに、その作り方を一向に紹介してないじゃない。あたしたちはどうすればいいのよ?とのご批判、きっとあったかと思います。遅くなりましたがご紹介ます。参考にされてください。

 

※ 彫刻刀は「研ぎ」ますが、「げ、研ぐの?無理」なんてビビる必要はまったくありません。うまく研げなくていいのです。ほんと。
研いだ彫刻刀が「切れる」必要はありません。「削れれば」十分です。刃先が三角形になって、「とんがって」いればいいのです。だから大丈夫です。絶対にできます。

 

 

 

 

錆漆を削るときに使う彫刻刀をカスタマイズするのに使う道具と材料

必要な道具と材料

  • 道具: 6⃣ 彫刻刀(平) 刃幅9㎜ ※平丸が手に入ったらそれで終了! 4⃣ 砥石(#800) 5⃣ レンガ(なくても他の手があります) 2⃣ ステンレストレイ 1⃣ バケツなど(水桶)
  • 材料: 水  3⃣ ウエス 

※ ② はホームセンターで売っている「鎌研ぎ用」などの安いもので大丈夫です。
ホームセンターでよく見かけるのが、表が#800、裏が#180(だったかな?)の両面砥石の小さいものです(大きさ13㎝×3㎝)。だいたいどこのホームセンターでも置いてあります。価格は\500~\600-程度です。片面のものでももちろんオッケーです。とにかく#800程度のものでしたらなんでも大丈夫です。
ただし、「ニュー大村砥」という砥石は避けたほうがいいと思います。粗いし、研いでいるとツルツルと滑る感がありますので、ちょっと使いづらい。
家になぜか「キング」や「ベスター」「シャプトン」もしくはダイヤモンドの砥石があったらそれを使ってください。

 

 

彫刻刀の準備


まずは彫刻刀を準備してください。「平」です。
もちろん、最初から「平丸」を買っちゃえばそれがベストです。100均でも売っている時があります。が、商品ラインナップの回転が早いので運次第です。
ホームセンターで\500~\800くらいで手に入るなら買っちゃってもいいですよね。

が、今回の状況設定は100均で「平刀」を購入したとしてスタートします。

金継ぎで使う彫刻刀

仕事帰りにお近くの100均に寄って彫刻刀を買います。
できたら5本組じゃなくて、2本組とか単品のものの方が刀の「作り」がいいです。
もしくは、小学生のときの「よしはる最高級彫刻刀」を押入れから探し出す。(まったくもって「最高級ではないので躊躇なく金継ぎ用として使ってください)

金継ぎで使う彫刻刀

↑画像の彫刻刀は2本組のものです。

金継ぎで使う彫刻刀

この「刃表」と「刃裏」というワードは頻繁に使いますので間違えないように覚えてください。
私は今でも間違えます。

金継ぎで使う彫刻刀

「刃裏」が平べったい側です。

 

 

〈彫刻刀のカスタマイズ 01〉 荒砥ぎ~刃を整形する


まずはかなり大雑把に刃先に「丸み」をつけます。

レンガを用意します。
ん?ない?持っていない?買うのも嫌?

わかっています。レンガ、なくても大丈夫です。
家の外に出てください。どこかにコンクリートがあるはずです。こっそりお隣さんの塀をお借りしてください。 大丈夫です。

この作業は10~20分で終わりますので、こっそり。

金継ぎの錆漆を削るのに使う彫刻刀を研ぐ

 まずは彫刻刀の左半分に丸みを付けていきます。

金継ぎの錆漆を削るのに使う彫刻刀を研ぐ
研ぐときに少し円を描くように前後に動かします。と同時に刃自体も少し回転するようにします。
そうすると「タッチング・ポイント」が移動していきます。

刃の左端からスタートします。刃を前に進めながら、タッチポイントを刃の真ん中の方へと徐々に移動させていきます。
刃の真ん中までタッチポイントが移動したら、一旦停止します。そしてそのまま逆の手順で元に戻ってきます。
タッチポイントを真ん中から始めて、彫刻刀を手前に移動するとともにタッチポイントを刃の左端へと移していきます。

このへんの感覚は最初は「わけわからん」と思います。時々、研ぎ直すことになりますので、そのうちに少しずつ感覚が掴めてくると思います。
「そこそこ」研げていれば十分ですので、「あたし、できない…」なんてがっくししないでくださいね。どうせ器に当たってすぐに刃はボロボロになるのですから、うまく研げなくて大丈夫です。

私もはじめはうまく研げませんでした。でもそれなりに使えました。

金継ぎの錆漆を削るのに使う彫刻刀を研ぐ

 左半分がちょっと丸まりました。どうでしょう?

すごく丸みの強い形を作りたい場合はこの作業をがんばって続けてください。

 

次に刃先の右半分です。

金継ぎの錆漆を削るのに使う彫刻刀を研ぐ

刃先の真ん中からスタートします。右半分はちょっとやりづらいです。手が動かしづらいんですね。

金継ぎの錆漆を削るのに使う彫刻刀を研ぐ

円弧を描くように勧めます。タッチポイントを少しずつ刃先の右端へと移動させていきます。
こんどは逆の手順で手前に戻ってきます。

これを反復して、彫刻刀の右半分に丸みを付けていきます。

金継ぎの錆漆を削るのに使う彫刻刀を研ぐ

ほんのり丸みがつきました。今回はこんなもんで。

 

 

 

〈彫刻刀のカスタマイズ 02〉 中砥ぎ~刃をとんがらせる


続いて#800の「砥石」で研ぎます。これはホームセンターで買ってきてください。

研ぎの手順は

  1. 刃裏を研ぐ
  2. 刃表を研ぐ
  3. 最後にささっと刃裏を研ぐ

です。

 

ではさっそく研ぐためのセッティングです。

砥石をあらかじめ水の中に浸しておいてください。砥石に水を吸わせます。水に浸すと最初ブクブクと泡が出ますがそのうちでなくなります。水が飽和した状態です。こうなってから使います。

金継ぎで使う彫刻刀を砥石で研ぐ

机が汚れるのが嫌でしたら、この下に100均で買ってきたステンレスのトレイを敷いてください。
ステンレストレイの上にウエスを敷き、その上に砥石を乗せます。
ウエスは砥石が動くのを防ぐスベリ止めです。

金継ぎで使う彫刻刀を砥石で研ぐ

 まずは「刃裏」を研ぎます。
砥石にペタリと刃裏をつけてください。図では浮いていますが、ミスです。無視してください。ちゃんとくっつけてくださいね。

※ 水をちょくちょくつけながら研ぎます。

金継ぎで使う彫刻刀を砥石で研ぐ

 刃の上から軽く指で押さえます。力を入れる必要はありません。
それから刃を前後に動かしてください。しばらく研ぎ続けます。

金継ぎで使う彫刻刀を砥石で研ぐ

 どのくらい研げばいいのか…というと、原則としては「刃の先まで砥石が当たって平面が出るまで」です。
が、原則通りにやろうとするとかなり手間がかかる場合があります。彫刻刀の刃裏がもともと反っていたりするとちょっと大変です。そんなときは「そこそこ」で大丈夫です。
ひとまず、レンガで研いだ時の「ガサガサ」したバリがとれていればオッケーとしておきましょう。

金継ぎで使う彫刻刀を砥石で研ぐ

 次に「刃表」を研ぎます。
レンガで研いだ時と同様の研ぎ方です。まずは刃先の左半分から研いでいきます。

①刃先の左端を砥石に当てます。そこからスタートします。
少し「円弧」を描くように刀を前方に進めていきます。

金継ぎで使う彫刻刀を砥石で研ぐ

②刀を前に進めながら砥石にタッチしているポイントを少しずつ刃の真ん中のほうにずらしていきます。

金継ぎで使う彫刻刀を砥石で研ぐ

 ③刃の真ん中までタッチポイントが移動したら、そこで停止します。

今度は奥から手前に向かって戻ってきます。③→②→①の手順でタッチポイントもずらしていきます。

この往復動作を繰り返します。
最初はゆっくりとやってください。今、彫刻刀のどこが当たっているのか感じながら(イメージしながら)研ぎます。

で、いつまで研げばいいの?というと、
原則としては「刃返り」がでるまで研ぎます。(刃先にビラビラとした「ささくれ」のようなものがほんのりできるまでです)
が、それは原則です。
私たちは「錆漆」と呼ばれる「土」を削るのですから、あまりこだわらないでいきましょう。
「とんがっていれば」オッケーです。もちろんキンキンに研いだほうが切れ味がいいですし、作業も楽にキレイにできます。

ひとまずは「とんがり」を目指しましょう。

 

左半分ができたら今度は右半分を同様の手順で研いでいきます。
刃先の真ん中からスタートして、円弧を描きながら刀を移動させつつ、刃先の右端へとタッチポイントを少しずつずらしていきます。

こちらもできるだけ「とがる」まで続けてください。

 「そこそこ」で納得できたら(もしくは「もう、いや!」と少しでも思ったら)完成です。
一番のコツは嫌になるまではやらないということです。

この先、幾度となく研ぐことになりますのでだんだんと上手になっていきます。いきなりはうまくはいきません。ですので、嫌になる前に「そこそこ」でやめておきましょう。

金継ぎで使う彫刻刀を砥石で研ぐ

最後に刃裏を砥石に充てて、2,3回、前後に研ぎます。
「刃返り」をとります。

これで研ぎが完了です。お疲れ様でした。

 

 

平丸彫刻刀の完成


 

錆漆を削る平丸の彫刻刀が完成

 どうでしょう?裏から見ると結構、キレイに研げています。

錆漆を削る平丸の彫刻刀が完成

 が、表から見るとイタイ感じです。でもいいのです。とりあえずこれで錆漆、刻苧漆、エポキシ接着剤、パテは十分削れますから大丈夫です。

錆漆を削る平丸の彫刻刀が完成

ガシガシ、使い倒してください。そして切れなくなったら、ガシガシ研ぎなおしてください。2回目からの研ぎは手早く済みますよ。

錆漆を削る平丸の彫刻刀が完成

「平丸」のカーブの具合ですが、フラットに近いものからカーブのきついものまで3種類くらい持っているとすごく便利です。
Rのきついボウルやお椀の内側を削るときにはカーブの強い刃先の彫刻刀がどうしても必要な場合があります。(きれいに作業をしたければ)
一度、平丸彫刻刀を自作すると2本目からははるかに簡単に、手早くできるようになりますので、チャレンジしてみてください。

私はフラットに近い1本と、少しカーブのついた2本でほぼ作業ができています。
フラットに近い平丸が作業の75%くらい。少しカーブのついた平丸が20%くらい。残り5%は「曲がった刃」(スクイと呼ばれたりします)の平丸を使います。がほとんど使いません。

 

ですので、皆さんが作る一本目の平丸はフラットに近いカーブでいいと思います。これが一番汎用性が高いです。

これであなたの「金継ぎランキング」が一気に上昇するはずです。
カスタマイズをぜひ。

 

 

 

 

 

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