小さい欠けの金継ぎ修理方法 内田鋼一〈掛け仏〉の修理(概要のみ)

欠けた内田剛一の掛け仏の金継ぎ修理 本漆金継ぎ

欠けの金継ぎ修理でよみがえった内田剛一さんの掛け仏

※ 陶板の角がほんの少し欠けています。その金継ぎ修理の方法を説明していきます。本物の漆を使った修理方法ですので「かぶれる」可能性があります。ご注意ください。

※今回は金継ぎ工程のごくごく概要のみを解説していきます。

金継ぎとは


金継ぎとは欠けたり、割れたりした器を漆で直す日本の伝統技法です。漆で接着し、漆で欠けや穴を埋め、漆を塗って、最後に金粉や銀粉を蒔いてお化粧をします。

 

〈 目次 〉

STEP 1.1

  修理物件の診察

 器 information

  • 作家: 内田鋼一さん
  • 修理物件の特徴: 表面がかなりザラザラ
  • 修理箇所: 正面向かって右下の角
  • 破損状態: 小さな欠け(表側 3×6㎜ 裏側 6×10㎜)
  • 全体の大きさ: 縦30× 横26㎝
  • 仕上げの希望: 金粉、古色仕上げ

 ※古色仕上げ…古びた感じ、経年変化が感じられるような仕上がり

 

内田鋼一さんの掛け仏の金継ぎする修理前。損傷のチェックをする。

緑青を吹かせて緑色になっているようです。

金継ぎの修理を始める前に、まずは損傷の確認をします。

金継ぎ修理前の傷の確認。右下部分の欠け表側右下部分が欠けています
白く見えるところが欠け部分です

掛け仏裏側の全体

裏側です

裏側の左下に欠け

裏側から見ると左下部分に欠けがあります

 

STEP 1.2

  漆で素地固め/マスキング

金継ぎの作業に取り掛かる前に、修理部分以外が汚れないようにマスキングします。今回の依頼品はガサガサボソボソしているので、漆や錆漆などがついてしまうと除去しづらそうです。(というか、きれいには取れないでしょう)

マスキングテープ

マスキングテープ

錆漆をする前に欠けた部分のまわりだけマスキングテープで養生しました。

マスキングの詳しいやり方▸ マスキングの方法

続いてテレピンで希釈した生漆で欠けた部分の素地を固めました
▸ 金継ぎの素地固めのやり方

金継ぎの素地固めを行う前に欠け修理部分のマスキングを行う

陶板の表側をマスキングテープで養生しました。

欠け部分のマスキング修了表側

マスキングを完了した表からの画像です

金継ぎの修理する部分の周りにマスキングを施す裏側から見た画像です

STEP 2

  錆漆/錆の削り研ぎ

金継ぎの錆漆付け作業では欠けた部分を錆漆で埋めます。
まずは錆漆を作ります ▸ 錆漆の詳しい作り方

金継ぎ工程の錆漆の乾燥後

表側から見た画像です

マスキングをしてあるので錆漆がはみ出しても大丈夫です

錆漆完了後の裏側からみた画像裏側も錆漆を付けて整形します

金継ぎ工程の錆漆二回目が完了

金継ぎの錆漆の作業は二回おこないました

この後錆漆の研ぎをしっかり行う

マスキングテープをはがします

そのあと刃物を使って錆漆を削って周りとのライン、
平面のレベルを揃えます

表面に関してはある程度揃えます

最後は耐水ペーパー#400で表面を整えました

 

※今回の依頼主から”古色仕上げ”のリクエストがありましたので
あまりきれいにし過ぎないように気を付けました。

STEP 3

  漆の下塗り

金継ぎ工程の漆の下塗り後

表側

漆塗り一回目です。黒漆(呂色)を塗りました。

金継ぎの漆塗り一回目

裏側

漆塗り一回目

 漆塗り二回目

表側

漆塗り二回目

漆塗り二回目

裏側

漆塗り二回目

 

STEP 4

  上塗り前の研ぎ

漆の研ぎが終わったところ

表側

上塗り前の研ぎ終了後です

金継ぎ修理の漆の上塗り前の研ぎ

裏側

上塗り前の研ぎが完了しました

この研ぎでも表面がきれいになり過ぎないように
気を付けます。

レベルが揃い過ぎないように、
ちょっとした段差を敢えて残すように、
…とか工夫します

 

STEP 5

  蒔絵/金粉磨き→完成

欠けの金継ぎ完了

完成まで飛んでしまいました。すみません。

金継ぎ古色仕上げ

表側

 ほんのり経年変化が感じられます。はい。確かに。

蒔絵のテクスチャー

表側

はい、ちょっと黒くなったり、ガサガサしていたり、
部分的に艶が出ていたり、艶が引けていたりします。

すごく曇っている箇所もあります。

”古色”といっても特別な技法があるわけではありません。

ただひたすらあの手この手を使って、試行錯誤をしながら
周りと調和しているかをチェックしながら前進します。

物件全体の雰囲気を見ながらです
修理箇所だけ見ていたらうまくいきません
その部分だけ周りから浮いてしまいますので

 

ありきたりなワーディングを使えば
デッサンや絵画、彫刻と一緒です

…なんと予備校チックな

でも、そうなんです

金継ぎの古色仕上げ

裏側

止め時も大切です

これ以上やると「わざとらしく」なるラインがあると思います

踏み越えないでください