自分探しの旅人と出会えなかった旅人



2017-01-26

「自分探しの旅」という言葉がありますよね。

「本当の自分」を見つけに、放浪の旅に出る。その行為に対して「旅に出たからって”本当の自分”が見つかるわけないでしょ!」とう批判をよく聞きますし、その主張はよく分かります。すごく納得できます。
けど、昔、バックパッカーを経験した身としては違和感があるのです。

僕が旅していた最中に「自分」を探している人なんていたかな…??
いや、そんな人には会わなかった気がする。というのが僕の印象です。
人それぞれ何がしかの想いを持って旅に出ていたと思います。
それは自分の現状に思い悩んだ末、そこから抜け出す”きっかけ”としてだったり、海外に対する純粋な憧れだったり。
あとは何となく「決めちゃった」から、行かざるを得なくなった人(←これ、僕です)も多かったんじゃないかな?と思います。

「本当の私」を見つけるために旅に出ました…という人には僕は残念ながら出会えなかった。

僕自身、「何となく」で旅に出たからなのか、出会う人も同じような雰囲気の人ばかりでした。
ほんと、「類は友を呼ぶ」の言葉通り、似たような人と惹きつけあってしまって、「自分探し」の人とは出会えなかったのかもしれません。
もしそうだとするとちょっと残念でした。せっかくなら会ってみたかった。

「金継ぎ」って「自分探しの旅」だなと思います。
そこで探しているのは「本当の自分」ではなく、「あの頃の自分」です。
遠い記憶。忘れ去られた記憶を辿っていく…
ふとした瞬間、思い出したくなくて意識の奥底に追いやっていた記憶にアクセスしてしまう可能性がある。

そんな厄介な記憶を呼び覚まし、封印を解いてしまう技法。もしかしたら取り扱い注意かもしれません。
でも上手くいけば、ちょっとだけ「あの時の私」を受け容れられるのかもしれません。